15年ぶりに改訂され、昨年末に全5巻の刊行が完結した「新版 角川俳句大歳時記」(KADOKAWA)に、「東日本大震災の日」が新たに春の季語として加わった。多くの人が悲しみや喪失を句に詠み続け、そして忘れないという祈りを込めて、この季語は生まれた。
「角川俳句大歳時記」は、「春」「夏」「秋」「冬」「新年」の5巻から成る、最大級の季語辞典。新版には、旧版刊行以降に起きた災害や自然現象などに関する新季語を含む1万8000語以上を収録。改訂の主な目的は季語に添える例句の見直しで、近年の秀句を加えた5万超の俳句が選ばれた。
「東日本大震災の日」は、関連季語「東日本大震災忌」「三月十一日」とともに春の巻に収められた。
東日本大震災忌
三・一一神はゐないかとても小さい 照井翠
例句には、がれきの街を目にした俳人の
新たな季語を採用するには、その語が定着しているかどうかが重視される。編集担当者は「大きな震災で、たくさんの方が句に詠んだ。季節感とも結びついており、検討対象になった」と話す。
ほかに「暖冬」(冬)、「ハロウィン」(秋)といった近年の事象や、「木の根明く」(春)、「チャグチャグ馬コ」(夏)など地方特有の自然や祭りに関する季語も新たに採用された。編集委員の一人で俳人の宇多喜代子さんは「季語として歳時記にあれば、後世の人も思い続けてくれる。歳時記は日本人の四季折々の暮らしを記録した百科事典。俳句を作らない人にも読んでほしい」と語っている。