中条きよし参院議員は「高金利罪」なのか 年利60%貸付報道を弁護士が解説

中条きよし参院議員は「高金利罪」なのか 年利60%貸付報道を弁護士が解説

西脇亨輔弁護士【写真:本人提供】

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元テレビ朝日法務部長・西脇亨輔氏

 日本維新の会の中条きよし参院議員が知人に対して1000万円を貸し付けた際に「年利60%」とする契約を結んでいたことが分かったと、週刊ポストが報じた。これを受けて日本維新の会の松井一郎前代表が「違法金利はダメ。事実であれば中条さん、潔く辞職すべき」とXに投稿。異例の展開となる中、今月7日、中条氏は「疑惑を全面否定した」と報じられた。この高金利疑惑は何を意味し、中条氏はどうなるのか。法律上の問題を元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士が解説した。

 もし、週刊誌報道が事実なら中条氏は大変なことになる。全力で否定するのも当然だろう。

 今回の報道で目をひくのは「年利60%」というすさまじい高金利だが、実はこの金利を約束させただけで直ちに犯罪になるわけではない。我が国の利息に関する法律は少々複雑で、「利息制限法」と「出資法」(正式名称は「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」)の2本立てになっている。

 このうち「利息制限法」は貸付の元本額に応じて15〜20%という上限金利を定めているが、その効果は契約が有効か無効かという「民事上」のものだけで、上限金利を超えても犯罪になるわけではない。

 ところが、「出資法」は違う。同法で決めた利率を超える金利の契約をすると刑罰を科すという「刑事上」の効果がある。適用される犯罪の名は「高金利罪」。5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科せられるという重罪だ。

運命を分ける「業とする」「業としない」

 この「高金利罪」になる利率は時代とともに変わっていて、現在は次のように決められている。

・金銭の貸付けを「業とする」場合は、年20%超

・金銭の貸付けを「業としない」場合は、年109.5%超(うるう年は109.8%)

 このように貸金を「業」としているかどうかで高金利罪の基準は大きく違っている。今回、問題となっている「年利60%」はこの間に入っているので、貸金を「業」としていれば「高金利罪」だし、そうでなければ犯罪にならない。

 では、運命を分けるかもしれないこの「業とする」とは何を意味するのか。これは「貸金業」と名乗っているかどうかとは関係なく、お金を貸すことを「反復継続」、つまり繰り返し続けているかどうかなどによって判断される。そこで週刊ポストは「中条氏は以前から、逮捕歴などによって金融機関の融資を受けられない人などを相手に、高金利で金を貸していた」などとする証言を掲載していた。

 もし、これが本当なら貸金は「仕事」つまり「業」だ。すると、年利60%は「高金利罪」となる。さらには無登録の貸金業と扱われると10年以下の懲役などの更なる罪となる。もしこうなったら、「議員の倫理」どころの話ではなく、大変な重罪の恐れがでてしまう。

 これに対して中条氏は徹底否定した。契約書には金利の記載はなく年利60%という契約はない。受け取った金銭は別の貸金の返済でこの貸金の利息ではない。「業」としての貸し付けもしていない。この3点が否定の柱と報じられている。これが事実なら犯罪は成立しない。真相はどちらなのかは、今後の調査を待つしかない。

「出資法」が作られたのは1954年(昭29)、中条きよし氏が8歳の時だった。中条氏も経験したであろう戦後の混乱の中で、横行した一般国民を食い物にする高金利などを止めるための法だった。国政に携わる中条氏がその法に反していないことを祈るばかりだ。

□西脇亨輔(にしわき・きょうすけ)1970年10月5日、千葉・八千代市生まれ。東京大法学部在学中の92年に司法試験合格。司法修習を終えた後、95年4月にアナウンサーとしてテレビ朝日に入社。『ニュースステーション』『やじうま』『ワイドスクランブル』などの番組を担当した後、2007年に法務部へ異動。社内問題解決に加え社外の刑事事件も担当し、強制わいせつ罪、覚せい剤取締法違反などの事件で被告を無罪に導いている。23年3月、国際政治学者の三浦瑠麗氏を提訴した名誉毀損裁判で勝訴確定。同6月、『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎刊)を上梓。同7月、法務部長に昇進するも「木原事件」の取材を進めることも踏まえ、同11月にテレビ朝日を自主退職。同月、西脇亨輔法律事務所を設立。今年4月末には、YouTube「西脇亨輔チャンネル」を開設した。西脇亨輔

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