■「僕らの食卓」とは
同作は、三田織の同名人気コミックを原作に、共に食卓を囲むことで縮まっていく距離感を丁寧に描く食と家族のハートフルドラマ。育った環境の影響で誰かと一緒に食事をするのが苦手な会社員・豊は公園で年の離れた兄弟・穣と種に出会い、なぜか「おにぎりの作り方」を教えることに。それ以来、豊と穣兄弟は一緒に食卓を囲み食事をすることが増えた、やがて家族のような存在となり、豊と穣の距離も次第に縮まっていく…。
豊役を犬飼、見た目は怖いが、いつも弟の面倒を見ている家族思いの兄・穣役を飯島が演じるほか、明るく元気で上田家のムードメーカー的存在であり、穣の弟・種役で本格的なドラマ初挑戦となる前山くうがが出演する。また、穣と種の父で陶芸家である耕司役の原田龍二や、古畑星夏、市川知宏、てつじ(シャンプーハット)ら個性豊かな面々がストーリーを盛り上げる。
■穣を心配して元カノ・奈央が会いに来る
亡くなった母親の夢を見て起きた穣。豊が家族のことで悩んでいるようすが気になる。バイト先のラーメン店店長にも元気がないなと言われてしまう。
そんなとき、保育園からの帰り道、種と歩いていると元彼女の奈央(玉田志織)と出会う。返信のない穣を心配して会いに来たのだった。種も一緒に喫茶店で奈央と話す穣。「いつ大学に戻るの?みんな心配しているよ」と奈央に言われても、穣はうんとしか言葉を返せない。
家のことをそんなにひとりで抱えなくていいと思うと奈央がさらに言うと、種が無邪気に絵本を見て見てと差し出してきて、ジュースをこぼしてしまう。
穣が慌てて「ごめん、服大丈夫?」と言っても、奈央は顔も上げずに黙々とおしぼりでテーブルを拭くだけで……。
■奈央のときと同じように種は豊にもジュースをこぼしてしまう
種が申し訳無さそうにごめんなさいと謝ると、奈央はやっと種のほうを見て「平気だよ」と力なく笑う。重い沈黙の後、奈央は「穣には穣の人生があると思う。大学で待っているね」と言い残して去った。奈央の言葉に答えず、陰った表情の穣を見ているとこちらの方も辛くなってしまう。
一方、家族のことで豊も元気を無くしていた。夜にスーパーに寄ると偶然、穣と種に出会う。お互いにちょっと元気がないことを察する2人。同時期に家族のことで元気をなくしてる2人のシンクロ具合にも、それを感じ取る繊細さもやっぱり彼らは相性が良いと思える。
種の提案でお母さんの思い出のラーメン炒飯を穣の家で作って食べることに。3人で美味しいと食べていると種がまたジュースをこぼしてしまう。種がしおらしくごめんなさいと謝ると、豊は「全然、全然、洗えばいいから」とサラッと笑顔で受け流す。
そのやり取りを見て感じ入っているようすの穣。彼の表情を見て、こちらもわかるわかると頷ける。言葉でこそ表さないものの種の存在を疎ましく感じ、穣にもプレッシャーを感じさせる奈央と豊の対応のこの違い! 対比の描き方が上手い。豊は種が失敗しても咎めず、種を受け入れることは穣のことも肯定しているように感じさせる。やっぱり穣には豊が必要だと思えて胸が熱くなる。
穣がさらにごめんなと声をかけても豊は「ううん、全然」と種と着替えに行き、ほっと安堵のため息を付く穣がちょっと泣きそうになっているように見えて、こちらも嬉し涙がこみ上げてきた。Twitterでも「種くんに対する元カノと豊くんの差だよね…」「彼女の対応にモヤっとしていた分、豊の優しさが余計に心に染みるね」「さっきの穣の彼女と豊の種くんへの対応の違い。」「優しい世界すぎる」と豊の神対応への賛辞が寄せられていた。
◆構成・文=牧島史佳