TBS井上貴博アナ 安倍元首相めぐる報道で感じたジレンマ「私自身もつらくなる瞬間があった」

 TBSの井上貴博アナウンサー(37)が9日、パーソナリティーを務めるTBSラジオ「井上貴博 土曜日の『あ』」(土曜後1・00)に生出演し、安倍晋三元首相が銃撃され、死亡した事件をめぐる報道を振り返った。

 井上アナは「Nスタ」(月〜金曜後3・49)の出演に備えて出社していた。「会社にいまして、ちょうど会社の食堂にお昼ご飯、弁当を取りに行って帰ってきて、報道フロアに帰って来て知りました」。スタッフの物々しい雰囲気で、大きな事件が起きたと察知したという。「数人のスタッフがドタバタと走っていて、大きい声を上げていたので、何か起きたんだなと分かるんですけど」と明かした。

 井上アナは「ゴゴスマ〜GO GO!smile〜」の放送中から、前倒しで出演することになった。「ことの重大性を知って“特別番組始まるぞ。井上、いつでも行けるように準備しろ”と言われて」。最近は「Nスタ」に半袖シャツ姿で出演していたが、スタッフと相談してスーツで出ることにしたという。

 午後2時の出演から「Nスタ」を経て、その後の報道特番でもメーンキャスターとして午後9時まで事件を伝えた。途中1時間だけ抜け、出演は6時間に及んだ。「こういう時って、進行表をいつどのタイミングでどういうことをやるか決まってない状況で、とりあえずスタジオ入ろうとなる」。五月雨式に情報が更新され、原稿や中継映像、VTR、ゲストの話などを「その都度判断してやっていく」と、瞬発力勝負だったことを明かした。

 スマートフォンの普及で、「事件や事故のその瞬間の映像というのが、多く残されるようになってきた」と感じているという井上アナ。報道の立場としては「事件の卑劣さ、対策をどうすればいいんだろうかとか、警鐘を鳴らすといった意味合いで、映像を流すということに制作側の気持ちとしてはなる」という考えを明かした。一方で、「それを見てらっしゃる方の心のダメージってどうなんだろう?昨日、私自身もスタジオで映像を繰り返し見ている時に、正直なところ、つらくなる瞬間というのがあったんですね」と素直な思いを吐露した。

 8日は在京キー局ではテレビ東京以外の全局が長時間、事件について特番を組んで放送した。井上アナは「確かに直視すべき現実ではあるかもしれない」としつつも、「でも、一番大切なのは一人一人の心のメンタルの状況だというのは間違いないと思う」と、ジレンマを口にしていた。

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