NHK紅白は視聴率ワースト2位で土俵際…歌合戦→国民的音楽番組に生まれ変わるための課題

 東京・渋谷のNHKホールで3年ぶりに有観客で行われた「第73回紅白歌合戦」。司会は3年連続となる大泉洋(49)に加え、橋本環奈(23)、嵐の桜井翔(40)、桑子真帆アナ(35)。テーマは「LOVE&PEACE〜みんなでシェア!〜」だった。

 前回は、番組テーマを多様性やジェンダーフリーを意識した「カラフル」に設定し、司会の総合・紅・白の区分を廃止。常連のベテラン演歌歌手は出演させず、音楽配信市場で話題となった若手を出演させるなどしていたが、今回もその路線を踏襲していた。メディア文化評論家の碓井広義氏はこう話す。

「ここ何年か紅白のあり方がいろいろ言われていた中で“紅白改革中”の心意気は伝わってきました。大健闘と言えるでしょう。歌という本来、優劣が付けられないものを、無理やり、対抗軸を作って対決させることにも違和感が持たれていましたが、今回は前回よりさらに“合戦色”を弱めていました」

 平均世帯視聴率は第1部(午後7時20分〜8時55分)が31.2%、第2部(午後9時〜11時45分)が35.3%(関東地区・ビデオリサーチ調べ)。第2部は、前回より1ポイント増え、前回の過去最低視聴率は辛うじて回避したというが、それでもワースト2位である。

「過剰な演出もなく、基本は歌をきっちりと聴かせる歌番組になっていた点は評価でき、安心して見ていられました。若者向けの歌い手と、中高年を意識した歌手を交互に出すなど、構成やバランスはよかったと思います。ダンスやアニソンなども取り入れ、会場や視聴者との一体感を大切にしながら、今の音楽を幅広くキャッチできる見本市になっていました。大きな番組ですから、急にハンドルは切れないとは思いますが、いつかは現在の“歌合戦スタイル”から、シンプルな“国民的音楽番組”に向かっていくといいと思います」(碓井氏)

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一部メディアを除きリハーサル取材から完全シャットアウト

 “歌をしっかり聴かせる音楽番組”に徹していた点については、同志社女子大学教授(メディア論)の影山貴彦氏も評価する。

「地上波民放各局が『逃走中』『鬼退治』と及び腰で臨んだ年越しで、あえて“逃げずに”紅白の王道を死守したことは及第点に値するでしょう。内容的にもトークや人物紹介などで時間を費やすことなく、シンプルに歌をしっかり聴かせていた。

 中でも印象に残ったのは、司会では橋本環奈さん、歌手では篠原涼子さん。橋本さんのMC力は予想以上でしたし、篠原さんはドラマ『silent』で目黒蓮さんのお母さん役で暗い役どころを好演していただけに、紅白では衰えぬ歌唱力を見せたのも若者も関心を持つ演出だった。紅白のジェンダー問題も『蛍の光』を先に流し、最後の最後で結果発表することで勝負の印象を弱める演出もさすがでした」

 しかしながら、影山氏は、そのあり方には課題も見えるとしてこう続けた。

「ただ今回は情報をかなり絞っていたせいか、若者の見るようなLINENEWSなど、SNS系のニュースにも紅白の話題が上がっていないのが……。情報をもっとオープンにしていたらもう少し拡散できたのでは。今回は粘り腰でも、これを何年も続けるわけにはいかず、変革を求められているのは確か。次のステージを考えるべきときは目前ではないでしょうか」

 実は今回からスポーツ紙など一部のメディアを除き、日刊ゲンダイを含む雑誌やWEB媒体などはリハーサルなどの取材から完全シャットアウトだった。ヨイショだらけのちょうちん記事を垂れ流すメディアだけを選別するとは“みなさまのNHK”という公共放送の原点が疑われる由々しき事態である。

「国民的音楽番組」に向け変革中であるなら、大衆に向けてオープンであることが必須条件。NHK紅白はその存在意義も含めてすでに土俵際、いや徳俵に足がかかっていることを自覚すべきだ。

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