NHKが5月に放送した「ニュースウオッチ9」で、新型コロナウイルスのワクチン接種後に亡くなった人の遺族を、感染者の遺族に見えるように放送した問題で、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は5日、「ニュース・報道番組としての基本を逸脱し、視聴者の信頼を裏切り、遺族の心情を大きく傷つけた」などとして、「放送倫理違反があった」とする意見を公表した。
この放送は報道局映像センターの職員が、新型コロナの5類移行による風化を防ぐため、短い映像で嘆きの声を伝えようと企画。感染死した人の遺族が見つからず、ワクチン接種後に亡くなった人の遺族3人を紹介されて取材したが、そのことを明示せず、遺族の声を伝えた。
意見書では、職員がワクチン接種に触れないと決めながら、対象を変えずに取材を続けたことを「企画意図にこだわり、遺族が伝えたかった証言の本質を軽んじた」と批判。またワクチン接種後に死亡した人も「広い意味でコロナ禍で亡くなった人に変わらない」と考えたことは、「ニュース報道の現場を担う者としてあり得ない」とした。「ジャーナリズムに関わる感度の底上げが焦眉の課題となっているように思われる」と警鐘を鳴らした。
記者会見した小町谷育子委員長は、取材経験の不足する職員への上司の助言やサポートが不足しており、2度の試写でもチェックが働かなかったと厳しく指摘。さらに「大切な家族を亡くした3人の遺族の声を合計24秒で伝えるという編集自体、人の死を巡る情報を扱う上であまりにも軽かった」とした。
意見公表後、遺族の1人は代理人を通し、「NHKは言い訳ばかり。あまりにずさんな番組作りは許せない」などとするコメントを発表した。
NHKは「指摘を
この問題では、NHKは放送後、取材に協力したNPO法人から抗議を受け、翌日の同番組で謝罪。7月に、職員と上司をいずれも出勤停止14日、同番組の編集責任者を減給、編集長をけん責の懲戒処分とした。