今回は同作にて制作統括を務めた櫻井賢氏、演出担当の安達もじり氏、大嶋慧介氏にインタビュー。「探偵ロマンス」の企画が生まれた経緯や市川実日子が登場したラストシーンの意図、続編の構想などについて聞いた。
■海外の人も楽しめるエンタメを作りたかった
ーー「探偵ロマンス」は大嶋さんが企画されたとのことですが、経緯を教えてください。
大嶋：そもそもドラマ部の中で、海外の人も楽しめるエンタメを作ろうと言う方針があり、時代劇がいいのではないかと思ったんです。でも、僕は時代劇がとても好きなのですが、これまでにテレビで見た時代劇の話を友達とできたことが1回もなかったんですよね。そこで理由を考えた時に、現代とは生活習慣がかなり違う時代のことを描いているので、視聴へのハードルが高いのかなと。
であれば現代から比較的近く、かつ「こんなことあったら面白いよね」という妄想が抱けるぐらいに現代から離れている時代でどのあたりがいいかと考えた結果、大正時代がいいのではないかと。現代に続く文化が花開いた頃でありながらも、どこか妄想できる隙間がありそうだったので、フィクションの舞台にちょうど良いと思いました。
そんな時に、当時有名だった私立探偵・岩井三郎さんに乱歩が弟子入りを志願した、というエピソードを知り、これは面白いバディものにできるんじゃないか、と思いついて。なので、企画当初は乱歩をやりたかったというよりは、大正時代を舞台にした新しいエンターテイメントを作りたいと言う思いが先にありました。
■ラストシーンでは「まだ物語は続く」と印象づけたかった
ーー最終話のラストでは市川実日子さん演じる男装の麗人が登場します。あのようなラストにした意図や、市川さんの撮影中のエピソードなどがあれば教えてください。
大嶋：まだ物語は続くということを強く印象づけたかった、ということがまず1つあります。市川さんは本当に住良木なのか、それとも新しい敵なのか、皆さんにちょっと想像して楽しんでいただけたらと思い、ああいった作り方にさせていただきました。
市川さんとは当日、扮装を仕上げていく最中や撮影現場でディスカッションしながら、どういうふうに演じていただくかをご相談しました。すぐに役をつかまれて、リハーサルの時点ではほとんど仕上がっていたのがすごかったですね。
櫻井：脚本の坪田文さんがお持ちのセカンドシーズンの構想の中に男装の麗人が出てきておりましたので、市川実日子さんに交渉した際にも、実は「あそこだけで終わる役ではないです」という風にちょっと風呂敷を広げて交渉しています。みなさまの反響にかかっておりますのでよろしくお願いいたします(笑)。
■もしも続編を作るとしたら…？
ーー「探偵ロマンス」全4話の放送が終了しましたが、手応えなどがあれば教えてください。
大嶋：1つは草刈さんたちのアクションを皆さんに楽しんでいただけたのがよかったなと。あとはお百や太郎ら若い登場人物の苦しみを感じ取ってくださっている方が多くいらしたようで、どこまで伝わるのかなと探り探りでやってきた部分が多かったので、共感していただける方がいてよかった、と思っております。
安達：出来上がったものに関してはご覧いただく皆さんに委ねたいと思うのですが、今回は結構若い方から応援のお手紙をいただいたりしており、うれしかったですね。
櫻井：ご覧いただいた方から「こんなに喜んでいただいているんだ」という反響をいただき、うれしく思っております。「探偵ロマンス」は繰り返し見て楽しめるスルメ作品と自負しておりますので、NHKプラスなどでもぜひ何度も見返して堪能していただければと思っております。
ーーもしも続編を作るとしたら、どのような展開をお考えでしょうか？
櫻井：今回「探偵ロマンス」で描いた時期以降、乱歩は結婚してお子さんも産まれるのですが、生活できなくなり、一家で大阪・守口のお父さんの家に帰ります。そして、それから作家デビューするも、連載を飛ばしてはどこかに行ってしまうということを繰り返したり、戦時中は検閲のせいで作品を発表できない時期があったりするんです。なので、そこを「姿をくらまして、実は裏で怪盗と対決している」という設定にすれば、大正、昭和、戦争中…と、長く作れる作品だと思っています。
