監督:ある意味、二人は相反するイメージをお持ちですが、私は1作目の『コンフィデンシャル 共助』が作られた時から、近くで二人を見守ってきました。
ヒョンビンさんとユ・ヘジンさんが『コンフィデンシャル 共助』にキャスティングされたという知らせが届いた時、北朝鮮の刑事役がユ・ヘジンさんで、韓国の刑事役がヒョンビンさんだと予想する人がほとんどでした。でもその逆だという話を聞き、私は「ああ、そうなのか。新しい。斬新だ」と思いました。
後に完成された『コンフィデンシャル 共助』を観て、「ああ、これはいい」と感じました。当初、北朝鮮の刑事を素朴で野暮ったいイメージにして、韓国の刑事を洗練されたイメージにするものだと考えていましたが、むしろ、このキャスティングしたのは斬新だったと思います。
ユ・ヘジンさんはとても親しみやすい人柄ですから、韓国の人なら、実際は知り合いでなくても、身近なお兄さんや隣に住んでいる人のように親しみを感じるようです。一方、ヒョンビンさんは稀に見る美男子で、私たちとは別の存在のように感じることもありますが、そんな姿の中にも、映画やドラマ等、作品を通して観ている人たちと親しくなるような魅力があると思います。
そのように相反する二人の俳優が出演している本作ですが、映画という舞台で素晴らしい二人の俳優が独自の多様な魅力を発散できるように、活躍の舞台をしっかり作るのが監督の役割だと思いました。そのためには、二人の俳優ならではの多様な魅力を観客に見せられるシナリオを準備しなければなりませんし、俳優とのコミュニケーションも大切です。一番いいコミュニケーションの方法は、おかしな話だと思われるかもしれませんが、俳優と一緒に食事をしたり、お酒を飲んだりすることです。そうすることによって親しくなり、心の中にある思いを引き出せるので、そのような機会をできる限り多く作るようにしています。それが後に、映画の仕上がりに大きな影響を及ぼすと思うからです。
Q.2前作に比べると、リム・チョルリョンに三枚目的な要素が加わり、より一層キャラクターとしての魅力が引き立っているように感じました。今作での役作りとして、ヒョンビンと何か話はしましたか?
監督:私は本作のシナリオを書き始めた頃から、ヒョンビンさんには本作を通して1作目より軽いイメージになってほしいと思っていました。1作目では重くて暗いイメージがあったので、2作目では軽快な雰囲気が出せればと思ったのですが、ヒョンビンさんはそのような方向性を好まないかもしれないと心配もしていました。1作目のキャラクターとあまりにも変わってしまうと、観客は受け入れがたいからです。そこで、そのバランスをうまく取ることが非常に大事でした。そんなわけで序盤は1作目に近いキャラクターで、シリアスな姿をふんだんに見せることにしました。
ヒョンビンさんはシナリオを読んだ後、軽快になったキャラクターを少し心配しているようでした。本人から「この調子でいくと、観客の皆さんは馴染めないのではないでしょうか」という意見も出ましたが、私はむしろ、それが大きな魅力になると思いました。ただし、ヒョンビンさんが心配していたように、急に馴染めないと思われないように序盤は1作目と近いキャラクターにする等、バランスを調節することに気をつけました。
Q.3今作から加わったダニエル・ヘニーの活躍も見どころのひとつです。ダニエル・ヘニーとの撮影で印象に残っているエピソードを教えてください。
監督:ダニエル・ヘニーさんは当時、本作に出演できる状況ではありませんでした。ビデオ・オン・デマンドプラットフォーム、Amazon Prime Videoの『ホイール・オブ・タイム』というミニシリーズ(ドラマ)に主人公として出演中で、チェコで撮影が行われていたからです。
ところが、ちょうどチェコでの撮影がコロナ禍で中断されていました。もし本作に出演することになったら、本作の撮影中、急にチェコでの撮影が再開された場合、そちらに行かなければならない状況だったのです。そのような事情から、ダニエル・ヘニーさんは最初、本作に参加するのは難しいということで、出演を辞退されました。でも私はダニエル・ヘニーさんにどうしても出演してほしいと思い、彼に代わる俳優を見つけるのは難しかったので、こう約束しました。「本作を撮影している途中、急にチェコから連絡が来たら行ってもいい」と。
私は内心、本作を撮影している間、チェコでの撮影の再開はないだろうと思っていたのですが、本作の撮影中、本当に急にチェコから連絡が来たのです。ダニエル・ヘニーさんも申し訳ないと言っていましたが、私としては約束をしていたので、そちらに行ってもらうしかありませんでした。また、こちらが引き留めたら、ダニエル・ヘニーさんが訴えられるかもしれないので行ってもらうしかなかったのですが、幸い、本作の撮影が終わる前に、チェコでのドラマ撮影を終えて戻ってきてくれました。
その過程でダニエル・ヘニーさんも板挟みになり、気苦労が多かったはずですが、そんなことは表に出さず、頑張ってくれたので、ありがたかったです。
彼はアメリカで育ったため、アメリカ的な考えを持っているだろうと思われていますが、韓国に対して深い愛情を持っており、思っている以上に韓国語が上手です。
私は当初、彼と仕事をするのは大変だろう、誰かに間で通訳をしてもらわないといけないだろうし、コミュニケーションを取るのも簡単ではないだろうと思っていたのですが、通訳なしでほぼ全てコミュニケーションが取れました。それもよかったですね。韓国語をうまく話すために努力をしていることが感じられました。スタッフの皆さんにスニーカーを1足ずつ、プレゼントしてくれたこともありました。そんなところからも韓国への愛情が深いことが分かりました。
彼は常に韓国の作品に出演したいと思っているそうです。私もまたいつか機会があれば、ダニエル・ヘニーさんともう一度、作品を撮りたいと思っています。
Q.4ユナ(少女時代)演じるミニョンの活躍も今作の見どころのひとつとなっています。ユナはキャラクターに寄り添って演技をしていたと明かしていますが、ミニョンの活躍を描くにあたって、ユナとどんなことを話されましたか?
監督:ユ・ヘジンさんとヒョンビンさんは、シナリオを読んで本人が満足できたら出演すると言ってくださったのですが、ユナさんはシナリオを見なくても出演すると言ってくれて、とてもありがたく、感謝しています。それほど『コンフィデンシャル』への愛情が深いのだろうと思いました。もし3作目が作られるとしたら、真っ先に出演すると言ってくれるのはユナさんではないでしょうか。
1作目のユナさんが多くの方に愛されたので、2作目である本作では、もっとユナさんが活躍できるシナリオを書きたいと思いましたし、ユナさんもそれを望んでいました。
1作目のユナさんの存在は、ストーリーと少しかけ離れている感がありました。つまり、ヒョンビンさん演じるチョルリョンが、ユ・ヘジンさん演じるジンテの家に来た時だけ登場する存在でしたが、本作ではもっと比重を増やしました。解決すべき事件にユナさんが登場し、事件解決のために協力する存在として比重を増やすことが本作のシナリオの目標でした。
そのため、後半でもさまざまな場面で役割を果たし、人質救出劇が繰り広げられた時もユナさんが積極的に関わって、その状況から脱出できるようなシナリオを書きました。
Q.5監督のいちばんのお気に入り、このシーンは特に大変だったので注目して欲しいというシーンを教えてください。
監督:家族が集まるシーン、つまりマンションで展開される多くのシーンは、本作が他の作品と差別化されるところだと思います。1作目でも、ユ・ヘジンさん演じるジンテの家族が登場するシーンは観客が好んでくれました。2作目も同様だと思ったので、本作を作る時は家族が集まるシーンを楽しいシーンとして撮ることが大事でした。
しかし、それらのシーンは序盤に撮影することになったので、撮影前、私はとても心配していました。俳優たちがまだ現場に慣れていない序盤に、そのような重要なシーンを撮るのは避けた方がよいと思っていたのですが、幸い1作目で、すでに俳優たちの息が合っていたので、序盤にそれらのシーンを撮っても、満足できる撮影になりました。それらのシーンを撮る時は楽しくて満足感が大きかったです。
一方、アクションシーンは大きな危険が伴い、時間も製作費もかかるため、最後に撮ったのですが、それらも幸い、私たちが念入りに準備した分、満足できる仕上がりになりました。特にニューヨークのシーンは、ニューヨークではなく、韓国で撮影したのですが、観客の皆さんにはニューヨークだと思ってもらえてよかったです。あのシーンが一番、満足感が大きく、会心の出来になりました。
Q.6映画を楽しみにしている日本のファンに向けて一言お願いします。
監督:韓国で公開されてから少し時間が経ちましたが、本作を通して日本の観客の皆さんにお会いできるという知らせを聞き、とてもうれしく思っています。何よりも日本の観客の皆さんが『コンフィデンシャル:国際共助捜査』に愛情を寄せて、観た後、満足してくださることを願っています。
最近、日韓関係においてはさまざまな問題がありますが、このような文化的な交流は活発になるべきだと思います。私は日本映画が好きでたくさん観ていますが、日本でも韓国映画がたくさん紹介されて、多くの方に愛されてほしいですね。『コンフィデンシャル:国際共助捜査』が好評を得て、そんな役割を果たしてくれたらうれしいです。