■真和ら3組のカップルに不穏な空気
本作は、遊川和彦氏が脚本を務めるオリジナル作品で、「愛がない」「見る目(eye)がない」「自分(I)がない」と、それぞれにアイが欠けている者たちによるラブストーリー。2024年の東京を舞台に、恋愛偏差値が低いワケありアラサーの男女7人が織り成す物語が描かれる。
福士が扮(ふん)するのは、心から人を愛することからも愛されることからも逃げているため「愛がない男」と呼ばれている33歳の売れない脚本家・久米真和。ほか、男性経験のないまま31歳になったブックカフェ経営者・今村絵里加を岡崎紗絵、真和の高校の同級生で女性と付き合ったことが一度もない「自分がない男」淵上多聞を本郷奏多、多聞と同じ食品会社に勤める29歳の冨田栞を成海璃子、真和の高校の同級生で「見る目がない男」と揶揄される警察官・郷雄馬を前田公輝、結婚に対して強い焦りを抱いている区役所勤めの近藤奈美を深川麻衣、真和の高校の同級生で初恋相手の稲葉愛を佐々木希が演じる。
雄馬とのスピード結婚を決め、「みんなも私たちみたいにうまくいくといいのにね」と言っていた奈美。だが、第5話はそんな雄馬&奈美を含め、3組のカップルともに雲行きが怪しくなっていった。
■知り合って1カ月で結婚を決めた雄馬&奈美だったが…
奈美の両親に反対されたまま、結婚に突き進む雄馬と奈美。小規模な結婚パーティーを企画し、真和、多聞、絵里加、栞に幹事を頼んだ。
だが、ウエディングドレスの試着や引き出物選びのやり取り、また奈美が家を飛び出して雄馬の家で住み始めたことで生活習慣の違いも分かり、その関係にほころびが生まれていく。そして、パーティーの前日、雄馬がこっそり教えた多聞の秘密を奈美が栞に話してしまったことをきっかけに、口げんかに発展してしまった。
結局、翌日のパーティーは2人ともが会場から姿を消し、中止に。お互い逃げ出したことを知らないまま、街中で偶然出会った2人は「ごめん!」と同時に謝罪。それぞれの実家へと帰っていった。
■多聞の秘密を先に言ってしまう栞
そんな雄馬と奈美のパーティーの後始末をした真和&絵里加、多聞&栞にも思いがけない展開が訪れる。
栞は、奈美から聞いた多聞の秘密=女性経験がまだないことを「私、そういうのは全然気にしませんから」と先走ってしまった。
「もうそんなことで悩まないでください」とも言ってしまった栞。栞にとっては“そんなこと”でも人それぞれの物差しがある。また、多聞は自分から言うから待っていて…としていたのだから、そうするべきだったかもしれない。
多聞は「やっぱり俺には恋愛なんて無理だ」と心を閉ざしてしまう。
■真和&絵里加も“言葉”が生んだすれ違い
そして、真和もパーティーの帰り道、絵里加の言ったことが引っかかってしまう。
実は、真和の母は他に恋人を作って家を出ていた。本話では真和の元に突然現れてお金の無心をし、それを断ったことを報告した父に「冷たい人間」と言われた。母をかばい続けるそんな父に、真和は「子どものころからお父さんみたいな人だけにはなりたくないと思っていた。みじめだと思わないのかよ、そんな生き方して」とぶちまけてしまっていた。
母親との関係、そして愛との高校時代の別れ方から、絵里加は「本当に愛する人がいなくなってしまうのが怖いんじゃないですか」と問い掛け、自分は「ずっとそばにいます」と告げた。
その言葉に「そんな簡単に言わないでもらえるかな。そんな約束守れるわけないんだから」と真和。その瞬間の寂しさを埋める愛しかやはり求めようとしない真和に、絵里加は「愛することからも愛されることからも逃げ続けてください」と言って歩み去った。
愛すること、愛されること。その価値観から生じてしまったすれ違い。離婚した元夫と暮らす息子を思って密かに涙する愛も含め、愛を見失ってしまった彼らの姿にズキッと心が痛む。まだすれ違いが生じる前の雄馬と奈美に対して「あんなふうに後先考えずに恋愛に夢中になれるなんて、すてきじゃないですか」という栞の言葉が悲しく響いてくる展開となってしまった。
◆文=ザテレビジョンドラマ部