芸能人が監督となって本気でドキュメンタリーを撮る番組で、黒柳の撮影を担当したのは滝沢カレン。“カレン・タキザワ”の名で黒柳の半生に迫った。
インタビューの中で滝沢は、「絵本で言うと、これからのページはどんなふうにしていきたいですか?」と、独特な表現で尋ねた。すると黒柳は「これからは難しいと思います」と素直に回答。「やっぱりね、考えたくないけど、だんだん年取ってくればね、歩いてたって転ぶかもしれないし、仲のいい友達がいなくなっていくとか、寂しい思いをするとか。思っていたよりも、年を取っていくというのはこういうことかな?ってちょっと今、思っています」と、老いや時代の流れに向き合う心境を打ち明けた。
中でも野際さんとの別れは大きな出来事だったという。「あの方、NHKで同期生なのね」。黒柳はNHK放送劇団の専属女優として、野際さんはNHKのアナウンサーとして入局した。「そのころから仲良かったから。60年以上、仲良かったから。野際さんみたいな人がいてくれれば、いろんな話をして、ご飯を一緒に食べたり。たまにしか会わなくても、“あれからどうした?”って話がすぐ通じるみたいなね」。心が通じ合う親友との別れを悲しんだ。
野際さんは17年に死去。81歳だった。黒柳にとっては、大きな後悔があるという。「彼女が私に、“お墓まで持っていこうと思ったけど、あなたにだけは話しておこうと思うことがある”って言ったの。うんって言って、すぐ聞けば良かったんだけど、とうとう最後まで聞かないうちに野際さんが亡くなっちゃったでしょう?」。野際さんの思いに応えられず、永遠の別れになってしまった。「その後で聞いておけばよかった。何だったんだろうって。いくら何だろうと思っても分からないでしょう?お嬢さんに聞いてみたけど、そりゃあね、分からなかった」と悔やんでいた。