■ガラス板での首切断という名シーンが生まれた『オーメン』
“悪魔の子”ダミアンの誕生から始まる悲劇が描かれる1作目『オーメン』。外交官のロバート・ソーン(グレゴリー・ペック)は、我が子が死産したことを妻のキャサリン(リー・レミック)にも内緒にし、同時刻に誕生した孤児を引き取り、ダミアンと名付ける。その後ロバートは駐英大使となり、一家はロンドンで順風満帆な人生を送っていたが、ダミアン(ハーヴェイ・スティーヴンス)5歳の誕生日会で乳母が首を吊ったことを機に、身の回りに不可解な死が次々と降りかかり…。
まだ自分が悪魔の子であることに無自覚なダミアンだが、彼の正体に迫る者には次々と容赦のない悪魔の力をお見舞い。例えばロバートにダミアンのことを忠告するブレナン神父(パトリック・トラフトン)は、突然の防雨風から逃れようと訪れた教会で落ちてきた避雷針に全身を貫かれて即死。また、母キャサリンさえも高所での脚立作業中にダミアンに三輪車で突っ込まれ、大怪我を負うと、その後、悪魔のしもべである新たな乳母ベイロック夫人(ビリー・ホワイトロー)に病室から突き落とされてしまう。
事故に見せかける巧妙な手口で、一つずつ脅威を消し去っていくダミアンだが、なかでも最もショッキングなのが、ロバートと共にダミアンの謎を追う記者ジェニングス(デビッド・ワーナー)の最期だ。
考古学者のブーゲンハーゲン(レオ・マッカーン)から託された短剣をロバートが「子どもは殺せない」と投げ捨てたところ、「なら自分が殺す」と拾い集めるジェニングスだったが、後退してくるトラックから滑り落ちてきたガラス板によって首を落とされてお陀仏に。インパクト抜群の残虐シーンは、映画史きっての名首チョンパシーンとしていまなお語り継がれている。
■2作目はショック描写の残虐度がパワーアップ!
1作目から7年後を舞台に13歳に成長したダミアンが自らが悪魔の子であることを知り、自我に目覚めていく姿を描く『オーメン2 ダミアン』(78)ではその残酷度も大幅にパワーアップ。
ロバートの弟であるリチャード(ウィリアム・ホールデン)、アン(リー・グラント)夫妻に養子として迎え入れられ、いとこのマーク(ルーカス・ドナット)と共に不自由のない生活を送っていたダミアン(ジョナサン・スコット=テイラー)。ある日、通っている軍学校に赴任してきたネフ軍曹(ランス・ヘンリクセン)に勧められ読んだ聖書の黙示録をきっかけに、自分の頭の666のアザの意味を知ったダミアンは、自らの正体に迫る者を次々と葬り去っていく。
自分のことを嫌うマリオン伯母さん(シルヴィア・シドニー)の心臓発作を手始めに、秘密を知るジャーナリストがトラックに轢かれたりと、1作目をはるかに上回るハイペースで人が死んでいく本作。
なかでも残虐な死に方をしてしまうのが、工場事故で有毒物質を吸ったにもかかわらずなんの異常もなかったダミアンを怪しみ、調査するケイン博士(メシャック・テイラー)だ。ダミアンの細胞が山犬と同じことに気づいた博士だったが、エレベーターに乗り込むとカゴが急降下し、その勢いで落ちてきたワイヤーによって胴体から真っ二つに…。1作目の首チョンパに並ぶ、名切株シーンだった。
さらに考古学者ブーゲンハーゲンの遺品からダミアンの正体を知ってしまった博物館館長のウォーレン(ニコラス・プライア)も、突如暴走した貨物列車の連結部に足を挟まれるとそのまま別の車両との間に挟まれ圧死。目の背けたくなるような残酷シーンのオンパレードだった。
■赤ちゃん殺しという悪魔の恐ろしさが描かれた第3作
そこから月日は流れ、32歳となり絶大な地位を築いたダミアンが世界征服を企む一方で、キリストの生まれ変わりという初めての脅威と対峙することになるのがシリーズ完結編となる3作目『オーメン 最後の闘争』(81)だ。
ソーン財閥の社長、さらには大統領顧問という地位を手に入れ、世界征服も目前のダミアン(サム・ニール)。しかしそんな彼の前に、イタリアから7人の修道僧が短剣を携えて現れる。彼らはイギリスのどこかで誕生するキリストの生まれ変わりを守り、さらにはダミアンを抹殺しようと目論むが…。
駐英大使となるため、現職の大使の心を操り、拳銃で自ら頭を撃ち抜かせるという極悪な殺しを皮切りに、邪魔者を次々と血祭りに上げていくダミアン。7人の修道僧からなる刺客集団に奇襲されても、犬を操って食い殺させたり、自分の幻影を修道僧に投影して仲間内で殺し合いをさせたりと子ども扱いしてしまう。
そんなダミアンだがキリストの生まれ変わりとなる救世主の存在にはいささかビビっており、自分の使徒を使ってそれと思しき新生児を皆殺しにするというシリーズ屈指の残虐性を発揮。過去2作に比べ描写的にはマイルドだが、ダミアンがやっていること自体は一番ヤバいのが3作目だ。
■悪魔の子の誕生の秘密が描かれる最新作『オーメン:ザ・ファースト』
そんな3作の前日譚となる『オーメン:ザ・ファースト』では、悪魔の子が誕生するまでの秘密が明かされていく。
ローマの孤児院へとやって来たアメリカ人女性マーガレット(ネル・タイガー・フリー)は、心機一転、新たな人生を歩むべく修道女となる。そこで暮らす孤児の少女のなかでも問題児扱いされていた最年長のカルリータ(ニコール・ソラス)に、かつての自身の姿を重ね合わせ、気にかけるマーガレットだが、彼女の周囲で相次いで不審死が発生していく。さらにカトリック教会から破門されたブレナン神父(ラルフ・アイネソン)から、悪の化身を誕生させようとする教会の目論みを知らされたマーガレットは、その母として利用されようとしているカルリータを助けだそうとするが…。
ダミアンの誕生秘話が描かれる本作も不審死のオンパレードということで、悪魔の力によってどんな悲劇が起こるのか楽しみなところ。これまでのシリーズを上回る惨劇が繰り広げられるのか?ぜひ劇場でその一部始終を見届けてほしい。
文/サンクレイオ翼