■CDデビュー、歌詞提供…新たな挑戦
大河ドラマ6回、連続テレビ小説3回、TBS日曜劇場3回をはじめ、数々の名作ヒット作を残してきた鈴木。最近になって、今まで以上に新たな挑戦に積極的に向き合っているという。2019年には藤井隆プロデュースでCDデビュー。木村拓哉の2ndアルバム『Next Destination』収録曲「beautiful morning」では、自ら「作詞させてほしい」と志願して作詞を担当した。
CDデビューについて「昔の私だったらお断りしていたと思うんです。でも、最近は『やってみようかな』っていう気持ちが先に出てきたら、素直にやってみようと思うようにしています」と振り返り、歌詞提供についても「曲を先に頂いて、そのメロディーにその歌われる方のイメージで詞を考えるっていうのがすごく楽しくて」とうれしそうに語った。
挑戦に積極的になったきっかけは、知人に「悩んだらまずYESというのも手だよ」とアドバイスを受けたことだという。「無謀にYESというのでなく、YESと言った後にやれる方向に話を進めていくこともできるでしょうし。こちらからのお願いもしながら“本当のYES”にしていく、ということでしょうか」と、挑戦への向き合い方を打ち明けた。
■112分間カメラを止めず…
21歳から俳優業一筋。22歳で連続テレビ小説「君の名は」(1991年〜1992年、NHK総合)のヒロインを務めるなど、当初は清楚なイメージが強かった。イメージが大きく変わったきっかけは、三谷幸喜脚本のドラマ「王様のレストラン」(1995年、フジテレビ系)。この作品で支配人の愛人になるバーテンダー役を演じたことをきっかけに、愛人や悪役など役の幅を広げていった。
以来、12本の三谷脚本作品に出演している。2011年に放送されたドラマ「short cut」(2011年、WOWOW)では、112分間カメラを止めずぶっ続けで演技し続けた。
それは「かんでもやり直せないんです。そのまま続けなきゃいけないんです」という過酷なもの。「何があるか分からないんですが、100分くらいの間はとにかくお芝居を止めずに。それを計13回かな、13日間やりました。その中から一番いいものを放送したんです」。三谷との固い信頼関係を物語るエピソードだ。
最新作は、三谷が作・演出する11〜12月公演の主演舞台「ショウ・マスト・ゴー・オン」。鈴木は「舞台が始まる前から舞台が終わるまで、観客の皆さんと同じ時間軸で過ぎていくお話になっていて。群像劇の面白さもありますし、パニック映画みたいなものを見る感覚で、ハラハラドキドキしながら時間が過ぎていくようなものになっていくと思います」と見どころを語った。
■「YESで楽しんでいきたい」
この数年、指針にしているという金言「悩んだらまずYES」。この言葉をくれたのは、岩手でジャズ喫茶を経営するジャズ界のレジェンド的存在・菅原正二氏だという。そのジャズ喫茶がたまたま鈴木の映画デビュー作「愛と平成の色男」(1989年)のロケ地になっていたことに加え、たまたま共通の知人がいたこともあって、最近になって縁がつながった。
「(菅原さんが)『悩んだらまずYESだよ。YESから始めなきゃね』って。それ以来、私の中ではとりあえずYESと言おうと。金言ですね、私にとって本当に大事なアドバイスでした」。さらに「いろんな方との出会いと、YESと言ってきたことによって、今はすごく楽しく仕事させてもらえています。より一層トライして、面白がっていきたいですし、いろんなものに興味を持っていきたいですね。とりあえずYESで楽しんでいきたいなと思っています」と今後への思いを語った。
インタビューを終えた林先生は「ただYESと言いっぱなしではなく、YESと言った自分と向き合って、そのオファーをくれた人と話し合って、中身を伴うように誠実にされている方。YESと言うとことから世界が広がって、こんなにいきいきと生きていけるんですね」と、鈴木のポジティブな生き方に深く感じ入っていた。