将棋の藤井聡太竜王=名人、王位、叡王、棋王、王将、棋聖=への挑戦者を決める第36期竜王戦挑戦者決定戦三番勝負第1局が行われ、先手の伊藤匠六段が永瀬拓矢王座に109手で勝利し、竜王初挑戦へ王手をかけた。
何度も首をひねり、上を見上げた永瀬。最後の最後まで指し続けたが、伊藤は永瀬玉の詰みを読み切っていたようだった。自身初のタイトル戦の舞台へあと1勝とした伊藤は「少し間があきますので、しっかり準備をして臨みたいと思います」と持ち前の低い声で慎重な言葉を発した。
振り駒の結果伊藤が先手に。後手の永瀬が「作戦でした」と一手損角換わりに誘導した。難解な中盤戦に入り、伊藤が1時間4分の長考で永瀬陣に角を打ち込んで開戦。終盤には伊藤が「簡単には寄らないように」と自陣で手堅く受ける手も見せ、勝ちきった。
永瀬は「本局はいいところがありませんでしたので、しっかり準備して頑張りたいと思います」と2局へ望みを託す。
伊藤は竜王戦5組優勝で決勝トーナメントに進出し、1組5位で昨年の竜王戦挑戦者の広瀬章人八段や1組優勝の稲葉陽八段らを破り、挑戦者決定三番勝負まで駒を進めた。
藤井とは同い年だが、10月生まれの伊藤は7月生まれの藤井よりわずかに遅く生まれている。伊藤が竜王への挑戦権を獲得すれば、自身初のタイトル戦出場。また、藤井にとっては初めて自分より後に生まれた棋士との番勝負となる。
一方、永瀬は1組3位から勝ち上がり、自身3度目の挑戦者決定三番勝負に。藤井とは22年の第93期棋聖戦でタイトルを争っている。現在、王座戦挑戦者決定トーナメントで決勝まで勝ち上がっている藤井。藤井が王座挑戦を永瀬が竜王挑戦をそれぞれ決めれば、同一カードの”十二番勝負“となる可能性もある。
藤井と同い年の伊藤が勢いそのまま一気に決めるか。藤井の研究パートナーの永瀬が3度目の意地を見せるか。第2局は8月14日に行われる。