東大将棋部出身の山本氏が開発した将棋AI「Ponanza」は、叡王戦の前身・電王戦で佐藤天彦名人(当時)に勝利して話題となった。7年前の三段リーグ時からAIを研究に取り入れている藤井叡王は、「序中盤でどう構想を立てるか、AIは局面を評価値で判断してくれるので形勢判断する力がつく。AIを活用することでアプローチが分からなかった局面でもわかるようになってきて、将棋はいろいろな局面があるんだなと感じています」と自身の成長の糧になったと明かした。
山本氏は現在の将棋界におけるAIについて、「将棋がわからなくてもどっちがいいかわかりやすくなった。AIのおかげで野球みたいにスコアがわかるようになった。敷居を優しくしてあげて、観戦しやすくなったのがAIの正しい使われ方だな」と目を細める。藤井叡王も「将棋ファンの方も層が広がったと感じています」とその恩恵について語った。
現在山本氏はスタートアップ「Turing」を創業し、完全自動運転EVの量産を目指している。藤井叡王は「運転免許を持っていないので、自動運転を心待ちにしています。たまに師匠(杉本昌隆八段)の運転する車に乗ることあるんですけど、すごく運転が下手で、自分は(運転は)やめておこうと…」と苦笑。「自動運転車ができたら、買ってくれますか?」と迫った山本氏に、「できたら是非」と約束していた。
目標について問われた、藤井叡王は「将棋は不確実な要素が多いゲームで、目標を掲げてしまうとうまくいかないときも出てきてしまうので、目標に向かっているわけではなく、少しずつ棋力を上げて行ければと思っています」と淡々。山本氏の「皆さんが聞きたい答えはそれじゃないと思います。あと一冠、とりたいんですか?」と鋭い攻めを受け、「全くないというとそういうわけではないですが…チャンスが限られているのでできればいかしたいという思いはある。でも目標にするのは…」とタジタジだった。