草彅剛が20代からの半生を振り返る。35歳の誕生日は「まさに生まれ変わった日」【連載】草なぎ剛のお気楽大好き!最終回

■目まぐるしい毎日だった20代
この連載がスタートしたのは‘96年の春。僕は21歳でした。当時はいい意味で尖んがっていて、良くも悪くも自分の哲学みたいなのが強くて。今みたいな多様性の時代と違って、男はこうあるべきとか、そういう形にハマりたいと思い込んでいた部分があったんだと思う。ファッションにしてもひと通りハイブランドはトライしたし、海外の文化に憧れたり、仕事で行ったロンドンでセックスピストルズのライブを見ると、カッコ良いなって感化されたり。ピアスも好きでよくしてた。当たり前のことだよね。若いのに落ち着いちゃったらつまんない。時代も時代で、それこそテレビの黄金期で、番組のセットチェンジとか衣装の量は今の倍以上。そこで手にするものは、後にも先にも今は考えられない量だった。「SMAP×SMAP」の撮影なんか1時間番組を週に2日使って撮っていて、コントも1日5本とか、ビストロは必ずあって、歌も1日2本撮りとかしてたんだよね。別日にドラマの撮影が入ってきたりすると、僕の毎日はものすごいことになっていた。でもそこで培ったものが、今の基盤になっているんだと思う。20代でフルに詰め込んで、いっぱいいっぱいで、でも毎日楽しくて、いつも仲間がそばにいて。自分の身になってるかなんて分からないまま30代までずっと走り続けてた。

■若い俳優を見て自問自答

 最近20代の俳優さんたちと共演する機会が多くて、吉沢亮くんだったり、杉野遥亮くんだったり、仲野太賀くんもそうだよね。彼らを見てると本当にまじめで、一生懸命役に向き合って何かを掴もうとしてる感じが分かるなって思うんですよ。僕もそういう時期があったなって。たとえば「TEAM」(’99年フジテレビ系)で明日西村(まさ彦)さんと大事なシーンがあると、どうなるのかなって緊張してたし、今の若い子たちと接していると、たぶん彼は昨日の夜から緊張してたんだろうなって感じが分かるんだよね。そういうとき、ハッと思う。僕は”慣れ”ではないけど、そういう緊張はなくなってるんじゃないかって。初心というかね。だけどある一方で、そういうときこそ力を抜いて、いい意味でテキトーでいい。力入れてどうするんだよ、リアルってそうじゃないでしょって、若いみんなを見て自問自答してる。お芝居って面白いね。いつも刺激がいっぱいで。

■忘れられない35歳の誕生日

 以前の誌面に(香取)慎吾ちゃんと2人で表紙と対談をしている回があるけど、そこに35歳の誕生日って書いてあるんです。「任侠ヘルパー」(’09年フジテレビ系)の初回OAがちょうど僕の誕生日で。 当時20代後半から30代にかけては「チョナン・カン」(’01〜’10年フジテレビ系)で韓国のスパイスを毎月のように浴びて、全編韓国語の映画「ホテルビーナス」(04年)もできて、ドラマ“僕”シリーズもやらせてもらって、引き続き目まぐるしい毎日を送っていた時期でね。で、35歳直前に、僕、爆発しちゃったんです。やらかしちゃって、みなさんにたくさんご迷惑をおかけしてしまった。ものすごく反省して、落ち込んで、自分を見つめ直して。その復帰作が「任侠ヘルパー」。彦一というニヒルでワイルドな役はやったことなかったし、でも新しい自分を見せるには大きなチャンスだった。もう必死にやるしかなくて役と向き合っていたら、大杉漣さんがホメてくださったんですよ。1話の海辺のシーンだったかな。OKが出たあと、「剛くん、ひとつ殻を破ったね」って。うれしかったなぁ。その初回OAの日に僕は35歳になった。まさに生まれ変わった日。そんなことも今、思い出しました。やっぱり300回ともなると、思い出があり過ぎて話が止まらなくなる。だけど、面白いもので、いろんなことをやったり感じたりしてきているけど、僕は結局変わってないんだなって思うんですよ。もちろん変わらない人間なんていない。年齢も環境も周りも世の中も同じではないんだから。だけど、自分が意図してない、無意識の中では自分が変わってることには気付かないってことは、変わってないんだよ。僕はよく考えるんです。昔の自分と比べて今の僕はどうだって自問自答して。面白いじゃないですか。みんな過去はあるわけで、楽しみながら自分の過去と照らし合わせていくのが人生の醍醐味じゃないかなって。だから、もし若い人に「どうやって生きていけばいいんですか?」と問われたら、「考えなくていいよ」と言う。自分が思うままに生きればいい。意識的に自分を高めたり、どういう人生を歩みたいとか、どういう人になりたいというのがあるのなら、それに沿って努力するだけ。

■「楽しい」は毎日更新されていく

 僕はね、これからこういう自分になりたいっていうのは別にないんです。毎日楽しいから。楽しいが更新されているので、明日になるのがめちゃくちゃ楽しいわけ。最高じゃない、それって。自分に負荷をかけてこういう目標をもってとか、いらないよ。そういう意味では「お気楽大好き!」というこのタイトルは僕にぴったり。21歳のそこそこ尖んがってた僕を見て、このタイトルをつけた最初の編集さんは天才だね。逆にお気楽じゃないと、自分の目標だって見つからないと思うよ。お気楽マインドがいろんな発想を生み、そのぐらいの力の抜き加減のほうが新しい導きがある。先のことなんて分からないんだから。僕は一人では何もできなくて、今こうしていられるのも周りの方のお陰でね。近くにいてくれるスタッフの方や、30年以上一緒にいる(稲垣)吾郎さん、慎吾ちゃんには本当に感謝しています。これだけ長くお仕事ができて、幸せな思いをしているんだから。それも好きなことをやって、それが毎日仕事として成立しているので、今度は僕が何か2人に、周りにいるみんなにいい影響を与える存在になれるように努力していきたい。何よりファンの方がこんなにも長く応援していただいて。なかなか奇跡じゃないですか。いろんな流れの中で、グループの活動があって、新しい地図を広げたりして、またファンの方とのNAKAMAという、みんなが集まれる場所があったりして。ただのタレントとファンの方との関係以上の絆みたいなものを感じるのは、これだけ長く一緒にいた時間を積み重ねてきたからなのかな。作品にしても、見てくれる人がいて初めて完成するわけで、NAKAMAのみんなや吾郎さん、慎吾ちゃん、周りのたくさんの人たちがいるから、僕、草彅剛は成立している。シンプルなことだけど今すごく思います。楽しい方向に、明るく元気で。ここはいったんサヨナラだけど、僕らなりの明るい未来に進んでいけたらと僕は思います。そうだね。今、エンディングソングを流すなら「だったらDance!!」で。楽しくハッピーエンドに終わりたい。大好きな「蒲田行進曲」のセリフを借りれば「ここはキネマの天地ですから。望めば何でもかなうんです」。これからもよろしく。長い間、ありがとうございました。
撮影=荒木勇人

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