舞台『室温〜夜の音楽〜』 河原雅彦×古川雄輝×浜野謙太 取材会レポ

舞台『室温〜夜の音楽〜』 河原雅彦×古川雄輝×浜野謙太 取材会レポ

舞台『室温〜夜の音楽〜』 河原雅彦×古川雄輝×浜野謙太 取材会レポ

(カンテレTIMES)

 6月から東京、7月に兵庫で上演される舞台『室温〜夜の音楽〜』で演出をつとめる河原雅彦、主演の古川雄輝、そして劇中音楽と出演の両方で本作に参加する在日ファンク・浜野謙太の3人が東京都内で取材会を開き、作品の見どころを語りました。
 舞台『室温〜夜の音楽〜』は、ケラリーノ・サンドロヴィッチが2001年に作・演出を手掛け、第五回鶴屋南北戯曲賞を受賞した作品。田舎でふたり暮らしをしているホラー作家(堀部圭亮)とその娘(平野綾)のもとへ、巡回中の警察官(坪倉由幸(我が家))、作家のファンを名乗る女(長井短)、腹痛を訴え家にあがりこむタクシー運転手(浜野謙太)、そして、“とある凄惨な事件”の加害者の青年(古川雄輝)らが集まり、物語が進むにつれ奇妙な関係があらわになっていく…というのがあらすじですが、ミステリー要素だけでなく、クスッとした笑いも随所に織り込まれていて、その独特の世界観から“ホラー・コメディ”と絶賛されています。

傑作戯曲誕生から21年の時を経て、新演出版として本作に挑む河原は「演出家という仕事柄、常に面白い本を気にしていて、この作品も21年前に見ました。ケラさんは尊敬している、面白い作家さんなんですけど、演出をする立場からすると、ケラさんの感性を預かるのはハードルが高いです。ナンセンスな笑いの部分もあるので。そんなケラ作品の中でやりたい作品を考えた時に真っ先に浮かんだのが『室温〜夜の音楽〜』でした。あと、僕は音楽が好きで、これまでいろんなミュージシャンやバンドと仕事をしてきました。何年かに1回、ミュージシャンとコラボをしないといられないタチなもので…(笑)ミュージシャンも同時に探していて、そこも一致したのがこの作品でした。」と演出するに至った経緯を明かしました。

気になる作品の中身については「実際にあった殺人事件をモチーフにしています。舞台はさびれた田舎の漁村で、双子の姉妹のうち妹が事件に巻き込まれて亡くなってしまった。残された姉と父親が2人で暮らす家へ、妹の命日に変わった人たちが集まり、とんでもない一日になっていく…という作品です。ケラさんの作品は居心地の悪い、得体のしれない不気味さがベースにあって、その上でコメディとしても魅せるというところに日々難しさを感じています。“ホラー・コメディ”と言っていますが、ブラックな側面もあるので『ぜひ笑いに来てください!』と言えるものでもない。一方でファンタジー要素もあって、ホラーでありコメディでありファンタジーであり…簡単に一つのジャンルで言いきれない“カオス”が魅力です。」と語りました。

 初演当時、音楽を担当したのは“フォークロックバンド”たま。新演出版では全く音楽性の違う「在日ファンク」を起用した点について河原は「そもそも、たまさんありきで作られた作品だったので、たまさんが解散してケラさん自身も『もう二度とやることはない』と思っていたらしいんです。たまさんの音楽の世界観は唯一無二ですからね。ただ、タイトルに『夜の音楽』とついているので、この作品に音楽は必要。音楽性は違うけど、“土着感”から考えて“ファンク”という結論になりました。浜野さんは俳優として舞台作品をご一緒したこともなく、音楽でのコラボも初めましての状態でしたが、一番最初にオファーをかけました。もう、在日ファンクと組めていなかったら、この舞台やっていなかったな。オファーをして、それを受けていただいて、今日こうして記者の皆さんの前で取材できる運びになり、嬉しい限りです。(笑)」と、オファーの裏側を明かす一幕も。

 そんな河原の“熱烈ラブコール”を受けて音楽を担当することになった浜野が「河原さんと一から組み立てさせていただく、ある意味“共犯”という気持ちが強いです。ともすれば、演出に口を出しそうになる。」と言えば、すかさず河原も「ともすれば、浜野さんの意見を黙って聞いてしまいそうになる(笑)」と反応し、息はピッタリの様子。「この舞台のために書き下ろした曲が多く、在日ファンクとしても新曲を多数制作できる場でした。そういう機会を提供してくれたことへの感謝があります。お話が来たとき、バンドメンバーは『お芝居で演奏するの?』と疑心暗鬼な雰囲気でしたが、いざやり始めたらノってきています。ライブだけじゃ表現できていないところまでチャレンジさせていただき、新しい一歩を踏み出せたのではないかと思います。」と、バンドとしての手ごたえを語りました。在日ファンクの魅力については河原が「歌詞がとても想像力を掻き立てられるんです。具体的ではないところが芝居というエンタメと、ケラさんの作品の世界観とにマッチするなと。そう思って在日ファンクさんにオファーをする際に、既存の発表曲を台本に仮はめしてみたらこれが想像以上に合いまして…!正しい選択をしたなと思いました。既存曲でいけると思っていたところ新曲を作ってもらえることになり、感謝しています。」と大絶賛。
 すると浜野は「そういう観念的な歌詞の部分を深めていけたらと思って制作に取り組みました。ライブだとどうしても『ノリのいい曲をやらなきゃ!』ってなるんですけど、今回はライブなら『なんだこれ?』と思われそうな不気味な曲にもトライできて嬉しかったです。」と明かし、在日ファンクとしても進化を遂げたことを語ると「ケラさんの作品は裏のまたその裏…といった具合に何重にも意味が重なっていると伺い、まさにそういう曲をやってみたかったなと!曲を作るときはサウンドにのせて気に入ったワードをバン!とのせる癖があるのですが、そこからダブルミーニングをワードに込めていく作業をするので、ケラさんの作品に近いものがあるのではないかなと思います。めくってみたら実は裏があるってめちゃくちゃ怖いじゃないですか!?(笑)そういうところは僕たちも大切にしています。」と続け、全編生演奏への期待を高めます。

 5月中旬から始まった稽古は現在2週間を過ぎたところ。今作で3年ぶりの主演をつとめる古川は「映像作品と違い毎日稽古があるのがすごく新鮮です。今、みんなで役を紐解く時間を作っていて、ディスカッションをしながら役に対する共通認識を作っています。普段の映像作品ではできない役へのアプローチができていて、とてもいい時間を過ごせていると思います。今はまだ必死に役をつかもうとしている段階なので、どんな役かの説明がちょっと難しくて、一言では表現できないですが、稽古を通してイメージに近づけていけたらと思います。」と試行錯誤を繰り返す近況を明かしました。
 今作で古川とは初タッグとなる河原は、そんな古川について「とても誠実だと思います。できたふりばっかする役者も多い中で、分からないところを分からないと言い、こちらに示してくれる。分からないなりにも、こちらの要求に答えを出そうともがいてくれて、要求に近いものを出してくれます。そこからチューニングをして徐々に役に近づけていくというアプローチを通して、古川くんの“今”が見えて演出としてはやりがいに感じます。古川くんの腑に落ちた瞬間に、その演技がオリジナリティになり、古川くんなりの“間宮(役名)”になる瞬間が見れるはず。止まっても、確実に前に進める、古川くんはそこがいいんです!」と演出家から見た俳優・古川雄輝の伸びしろに太鼓判。
 続けて古川は「稽古に入る前は『こんな役かな?』と思っていたところが稽古をしていくうちに違ったり、書かれていないことまで想像を膨らませると役の違う一面が見えてきたり…。舞台をやるたびに自分の中で壁にぶつかるのですが、今回の役は想像の何十倍も難しくて、思ったより早く壁にぶつかったなという実感があります。」と殺人事件の加害者という難役を演じる上での苦悩を語ると、河原は「ケラさんの本は難しいので、悩むのは当たり前です!『へぇ〜』みたいな相槌一つで左右されてしまう。普通に読めば一瞬で終わるところですが、そこをどう解釈するか、ちょっとやってみては止めてまた考える、という感じで稽古も大変なんですよ。でも大変な分、目指すところまでいけたらとても素敵な作品になると思います!」と古川の背中を押すと、浜野も「僕が演じる“木村”というタクシー運転手は『えっ』というセリフが多いんですけど、全部意味が違うんですよね。サウナでいろんなボリュームの『えっ』を出して練習しました。(笑)僕の役もこれから完成していくんだと思います。」とケラ作品独特のセリフ回しへの苦労を打ち明けました。

 最後に舞台を楽しみにしているお客さんへ向け、河原は「この作品はいろんな感情を持ち帰ってもらえると思います。真っ黒で真っ白、どこまでも狂っていてどこまでも美しい。そんな作品です。本を預かるのって勝負じゃないんですけど、勝ちたいと思ってしまうんです。初演にはない面白さまで行かないと負けだと思うので、ケラさんへの大いなるリスペクトを持ってケラさんを超えていくという決意で、我々なりの『室温』を作り上げたいです。…じゃないとケラさんに申し訳ない!」と力強いメッセージを送り、続けて浜野は「全編生演奏なので、見ていてそんなに疲れないんじゃないかなと思います。お客さんには楽しんでもらいたいです。ウザいと思われないように盛り上げたいです!」と意気込み、最後に古川が「魅力的な役者と音楽が揃いました。演劇を見たことがない人でも純粋に楽しめる舞台になると思います!裏側まで深く読み解きたい、という演劇好きの方にもきっと満足いただけるはず。楽しみにしていてください!」と締めくくりました。

 舞台『室温〜夜の音楽〜』は、6月25日(土)から7月10日(日)まで東京・世田谷パブリックシアター、7月22日(金)から24日(日)まで兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールにて上演。
 ファンキーでディープな生演奏と共に送る“カオスな世界”をのぞきに是非劇場までお越しください。

【公演概要】
舞台『室温』
古川雄輝 平野綾 坪倉由幸(我が家) 浜野謙太 堀部圭亮 ほか

東京公演:2022年6月25日(土)〜7月10日(日) 世田谷パブリックシアター
兵庫公演:2022年7月22日(金)〜24日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

企画・製作・主催 関西テレビ放送
東京公演主催 サンライズプロモーション東京
兵庫公演主催 兵庫県 兵庫県立芸術文化センター

公式サイト⇒https://www.ktv.jp/shitsuon/

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