全国に300以上あるコミュニティFM。地域密着型のラジオ局として注目され、1990年代から2000年代にかけ急増したが、近年のメディアを取り巻く環境の変化の中、閉局が相次いでいる。
筆者の地元・兵庫県尼崎市にも1996年から放送を続けるエフエムあまがさき(愛称はFMaiai =エフエムアイアイ)がある。筆者も何度か出演した思い出深い局だが、こちらも昨年6月、今年3月末をもって閉局することが発表された。これまで局の運営を支援してきた尼崎市が手を引いたことで、資金面で存続が難しくなったそうだ。
しかし最近になって、これまで出演していたDJたちが一般社団法人を立ち上げ事業承継へ動いているという話を耳にした。長年、尼崎市民に愛されたコミュニティFMはいったいどうなるのか。DJの三宅奈緒子さん、武田康子さんに話を聞いた。
三宅:尼崎市から予算の打ち切りの話が出て、現在運営している財団から閉局を告げられた時はショックととまどいがありました。DJの間で存続させたいという話が出ました。
武田:今、サポーター制度などを立ち上げて営業をしているところです。なんとか存続させたくて……。
三宅:阪神淡路大震災がきっかけで発足した局でもあるんです。来る災害に備えて、絶対に必要だと思うんです。(※東日本大震災では携帯電話が2週以上不通の地域があったのに対し、テレビとラジオは視聴でき、特にラジオは電池式のものも多く停電の影響も受けにくかった)
ーー2022年には同じく25年以上続いたエフエムひらかた(大阪)も閉局しました。コミュニティFMに未来はありますか?
三宅:このままだとダメだと思っています。承継に向けて、開局以来ずっと黒字運営のFMきらら(山口県宇部市)などを参考にしながら事業計画を練っています。
武田:地域に根ざしたメディアだからこそできることもあると思います。たとえば、学生が運営する番組なども企画していきたいです。
三宅:実は閉局の決定後に、様々な会派の議員さんにお会いしました。閉局に賛成されている方であっても直接話すと、想いが伝わったように感じました。
武田:閉局を機に、関係者の想いの強さにも触れました。各所と連携して、継続できるよう頑張っていきます。
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次に、エフエムあまがさきの創設に関わった当時の尼崎市職員で、現在株式会社ウェルクルの会長を務める田中行哉さんと、息子で社長の田中学さんにも話を聞いた。
田中会長:当時、反対意見も多かった中、コミュニティFMの開設を決めました。阪神淡路大震災の翌年、国内でも46番目と早いタイミングでの開局でした。愛称の「aiai』の由来は、あいうえお、アルファベット順共に上位に来ること、アイで目の形、尼崎のAなどかなり色々盛り込みました。閉局は非常に寂しいです。
田中社長:さまざまなメディアが出てきてもラジオには可能性があると思っています。最近、「尼崎を盛り上げたい」という声を様々なところで聞くようになりましたが、地域密着のエムエムあまがさきはそういったニーズにも応えられるポテンシャルがあると思っています。個人としても、企業としても、出来ることを父と共に模索しています。
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最後に、エフエムあまがさき放送局長でもある、公益財団法人尼崎市文化振興財団の岩崎智之さんと尼崎市役所文化振興課の立石孝裕さんに話を聞いた。
ーー閉局について、どう思われますか?
岩崎:特にここ数年は、存続するように頑張っていたのですが、放送収入の大半を占める尼崎市からの「市政広報番組」の制作・放送業務廃止を受け、財団として運営が厳しくなった為、泣く泣く終了することとなりました。
ーー現在、DJが主体となり事業を承継しようとしていますが、どのように関わっていますか?
岩崎:総務省などへ一緒に出向いたり、スムーズに承継できるように動いています。ニュースなどだけを見るとネガティブな状況に見えるかもしれませんが、引き続き見守っていきたいと思っています。
立石:市の事業では無くなる為、役所職員としては関われないですが思い入れのある局です。時間外で書類の作成など、得意な分野で精一杯関わっています。なんとか存続してほしいです。
ーー承継に協力したいという思いがあるのですね。エフエムあまがさきが別のかたちで運営されていくことについてはどう思いますか?
岩崎:元々、第3セクターのような形で株式会社エフエムあまがさきが運営していたものを、財団が承継した経緯があります。エフエムあまがさきの歴史を終わらせず承継することは非常に有意義だと思います。
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正直、インタビュー前は関係者の間で敵対構造でもあるのかと思っていたエフエムあまがさき承継だったが、取材を通じて、各人に存続への想いがあることがわかった。
三宅:3月に放送は一旦終了します。ただ、今後総務省の許可がおりれば、早ければ8月には一般社団法人みんなのあま咲き放送局による放送が再開されます。
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無事継続が決まってコミュニティラジオの発展に寄与することを願うばかりだ。
(よろず〜ニュース特約・ぽすわんのカノー)