原作は直木賞作家・朝井リョウ氏(34)の作家生活10周年記念作。家庭環境や性的指向など異なる背景を抱えながら生きている人々が“交差”して動き出す物語で、先の東京国際映画祭ではコンペ部門最優秀監督賞と観客賞をダブル受賞。11月10日の封切りから1カ月で20万人を超える動員をみせている。
不登校の子供をめぐって妻とぎくしゃくしている検察官を演じた稲垣は「(反響の良さは)うれしいですね。ご褒美というか。みんなそれぞれ、他の俳優もそうですけど、スタッフの皆さんも覚悟がいる作品でした。忘れられない撮影期間だったので、皆さんに届いてね。そういった反響を頂けるのはうれしく思っておりますし、皆さんに見て頂くことによって映画の命に火がともるという感じがします」と声を弾ませた。
「あゝ、荒野」や「前科者」などを世に送ってきた岸監督は「重いテーマ。難しくてシリアスで。現場で話し合いながら悩みながら作っていました」と明かしながら、「香港や台湾の映画祭でもびっくりするほどの反響の良さ。国境を越えて受け入れられた」と素直に喜びを口にした。さらに「皆さんから頂いた感想の中に“登場した5人の人物(稲垣=寺井啓喜検事、新垣結衣=ショッピングモールで働く桐生夏月、磯村勇斗=夏月と感情を共有していく佐々木佳道、佐藤寛太=ダンスサークルに所属し、準ミスターに選ばれるほどの容姿を持つ諸橋大也、東野絢香=学園祭に大也が属するダンスサークルの出演を計画する神戸八重子)、それぞれの悩みが全部自分の中にある”というものがありました。共感して共鳴して頂きました」としみじみ語った。
岸監督の演出に触れて稲垣は「(映っていたのは)自分が見たことのない自分でした。それを引き出してくれた監督に感謝しています」と語り、さらに「公開してしばらくして、こうした話を監督と出来てうれしいですね」とトークを満喫していた。