■「売れる曲はハガキで分かる」
これまでに作詞したのは4500曲以上。累計売上数1億6000万枚という数字は、歴代作詞家で日本一。その詞世界で特徴的なのは、「サイレントマジョリティー」(欅坂46)や「恋するフォーチュンクッキー」(AKB48)など、他とは一線を画す独特の言葉選びだ。
歌詞の言葉を選ぶ時に気をつけていることは「どこで『えっ?』と思ってもらえるか」が大切だと話す。70〜80年代に放送していたTBSの音楽番組「ザ・ベストテン」の構成を担当し、歌詞や曲名の“イスタンブール”や“サンタ・モニカ”といった聞き慣れない言葉に、反響のハガキがどっと寄せられるのを見てきた秋元氏は「売れる歌っていうのは皆さんのハガキを読んでいると分かるんです」と明かした。
さらに、「何を書くかっていうことが僕にとってすごく大きくて」とも。たとえば、「サイレントマジョリティー」は、ベトナム戦争の頃に当時のニクソン米大統領が口にした言葉を学生時代に聞き、半世紀もの間「どこかに引っ掛かっていた」。それが、“若者たちよ、声を上げろ”というメッセージソングに生きた。林先生は「何十年も前の記憶が、今にうまくつながるものなんですね」と、驚きをもって聞き入った。
■フジテレビ社長が証言「企画力がすごい」
番組では、乃木坂46の齋藤飛鳥、秋元氏とプライベートでも交流のあるシンガーソングライターの福山雅治、さらにはフジテレビの港浩一社長が局の垣根を越えてVTR出演し、コメントを寄せた。
齋藤は「グループは若い女の子ばかりいますけど、(秋元氏は)私たちの誰よりも乙女」と証言。福山は「秋元さんは『感動がドミノ倒しのように伝わっていく、その最初のドミノでありたい』と。それは僕もすごく共感できるところで、人を感動させたいんだったらまず自分が感動しないと人は感動してくれない」と、作品作りの姿勢を称賛した。
港社長とは、1980年のテレビ番組「ザ・ラストショー」で、28歳の駆け出しのディレクターと22歳の構成作家として出会い、以来42年にわたり盟友だという。港社長は、秋元氏のずば抜けた才能について「企画力ですよね。すき間だったり、今はやっていないところに目をつけていくところが素晴らしい」と絶賛。若い頃に秋元氏と繰り返した意外な「企画の生み出し術」についても語った。
■面白いと思ったらまずやってみる
現在も、TBSで放送中のよるおびドラマ「差出人は、誰ですか?」の企画・原案などドラマを3本抱え、超多忙。
ヒロインをはじめ出演する新人俳優たちは、秋元氏が参加する「TBSスター育成プロジェクト」のオーディションで発掘した。「今までアイドルはやってきましたけど、女優ってどうやって発掘するんだろうっていうのが面白くて」と、“面白いと思ったらまずやってみる”という姿勢は、今も昔も変わらない。
秋元氏との対談を終え、林先生は「鋭いセンサーをお持ちですよね。センサーの磨き方も分かっていて、そのうえでどういう形でヒットするのかっていうメカニズムも分かっている。そして、誰よりも精力的に一日を長く使って毎日エネルギッシュに過ごされる。誰が勝てます?」と、その稀有な才能に最大限の賛辞を送った。