本作は、“燃える闘魂”アントニオ猪木の発した「言葉」の数々を切り口にしながら「ドキュメンタリー」「短編映画」「貴重なアーカイブやスチール」という3つの要素で構成された作品で、神田伯山は巌流島で講談を披露し、藤波、藤原はインタビューに応じ証言者としての役割を担い、三原監督はドラマパートを担当している。
企画の立ち上げから関わったという和田監督はオファー時を振り返り、「猪木さんの人生を描くには100分の映画では尺が足りない」と思ったという。「どこを切り取っても普通の人では体験できない人生を歩んでいる方。どのシーンもドラマチックで、どこを取り上げるのかはとても苦労することは想像していました」とハードな挑戦だったとしみじみ。ヒントとなったのは本作で最初にインタビューした棚橋弘至だったそうで、アントニオ猪木を知らない世代にもすごいプロレスラーがいたことが伝わるような映画にしてほしいという思いを託されたと明かした。
猪木の愛弟子である藤波と藤原は、思い出話が止まらない。藤波はまずタイトルに感動したそうで、「僕はいまだに探し求めています。プロレス人生の道しるべの人ですから」と笑みを浮かべていた。藤原は「もうすぐ探し求めて、どっちかに行くと思います。そこにいなかったらどうしよう…」と猪木がいる場所が分かっているような口ぶりで、「上かな?下かな?下だと思うよ(笑)」とジョーク混じりのトークで笑いを誘う。続けて「49日頃までは、(家のなかで)ドアがバターンと突然閉まったりすると、『いま、通ったな』って感じていました。最近は出ないけれど、出てきてくれるとうれしかった」という藤原の話に藤波も「僕も、家のなかでドアにぶつかったり、つまずいたり、痛い思いをするたびに猪木さんを思い出していました」と告白。
藤原は「よく殴られていたからね」と痛い思い出にも関わらず、笑顔いっぱいでトークを続ける。藤波もうれしそうに「思い出すね」と返答。猪木から殴られた際には避けるのはNGだとし、「避けると滑るから切れる。試合前によく血を出していたね」と大笑いした2人は、いまだったらとんでもないこととしながらも「恨んだことはない!」とキッパリ。声をそろえて、尊敬してやまない師匠への思いを口にしていた。
猪木の言葉の魅力について、神田伯山は「好きな言葉はいっぱいあります。なにを言うかよりも、誰が言うのかが大事。(アントニオ猪木という)人に魅力があるから、どんな言葉でもありがたいです。意外とダジャレでスベっているときもあるけれど、なんかありがたい。それは、猪木さんに魅力があるから。猪木さんの発する言葉を聞くと、楽しい、うれしいって思えます。言葉を超越した存在だと思います」と熱弁し、会場から大きな拍手を浴びていた。
フォトセッション後には、藤波が「僕たちの永遠のアイドルのためにご唱和ください」と呼びかけ、「1、2、3、ダー!」と来場者と一緒に叫び、猪木への愛が溢れるイベントを締めくくった。
取材・文/ タナカシノブ