看板商品は「サザン佳祐ドッグ」…桑田さんが愛しファンの聖地になった茅ヶ崎のパン店が閉店へ

 人気バンド「サザンオールスターズ」の桑田佳祐さん(66)が中学時代に通った神奈川県茅ヶ崎市のパン店「清月せいげつ」がこの夏、64年の歴史に幕を下ろす。桑田さんがスターになった後も愛し、サザンのファンや地域の人たちにも親しまれた小さな名店。切り盛りしてきた高橋ツナ子さん(87)は「佳祐や皆さんのおかげでここまでやってこられた」と感謝している。

 JR茅ヶ崎駅から海岸へと延びる「雄三通り」に面した店は1958年、ツナ子さんが亡き夫の清さんと開いた。周囲にはムギやサツマイモの畑が広がり、道路も未舗装だった頃。コンビニ店などもちろんなく、清月は学校帰りの中高生らでにぎわった。

 野球部だった桑田さんも学生服に白い肩掛けカバン姿で、週に2、3回は顔を出した。ちゃめっ気たっぷりの少年は、米国の西部劇ドラマ「ローハイド」のテーマ曲を、靴を脱いで馬の尻をたたくまねをしながら「ローレン、ローレン」と歌っていたという。ツナ子さんは「やっぱり、うまかったね」と懐かしむ。

 パンは夕方には売り切れることが多く、桑田さんから「おばちゃん、何か作ってよ」とせがまれた時には、魚肉ソーセージ、トマト、レタスをはさんだ「まかない」を作ってあげた。看板メニュー「サザン佳祐ドッグ」(税込み170円)の原点だ。

 78年に「勝手にシンドバッド」でデビューした後も、桑田さんは妻の原由子さんを紹介しに来てくれたり、ライブのチケットを送ってくれたりした。2000年夏の茅ヶ崎での凱旋がいせんライブでは、ツナ子さんがビデオメッセージで中学生時代の話を披露。会場は盛り上がり、それ以来、清月はサザンファンの「聖地」となった。

 15年前、清さんが77歳で病気で亡くなり、ツナ子さんが1か月ほど店を休むと、桑田さんから手紙が届いた。便箋5枚に思い出がつづられ、「清月の火を消さないように頑張れますか」とあった。優しい言葉に力をもらったというツナ子さんは「佳祐が心配しているから2、3か月は頑張ろうと思えた。長く続けちゃったけれどね」と振り返る。

 全国からやって来る客のために、体と相談しながら深夜に仕込みを始め、午前5時に店を開ける。営業は金土日曜の週3日。毎日100個以上のドッグも2時間ほどで売り切れる。ただ、「いつまでも続けてしまうから、区切りをつけなきゃ」と家族に諭され、今年の初めに閉店しようと決めた。

 「ここまで幸せだし、自分でも偉いと思う」と笑うツナ子さん。最後の営業は88歳の誕生日となる7月15日だ。

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