<※以下、ネタバレ有>
原作は漫画家・よしながふみ氏の同名人気作。3代将軍・徳川家光の時代から幕末・大政奉還に至るまで、男女が逆転した江戸パラレルワールドを紡ぎ、センセーションを巻き起こした。
過去計3度、ドラマ化&映画化されたが、今回は幕末・大政奉還まで初めて映像化。2025年の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」も手掛ける森下佳子氏が、今年1〜3月の「Season1」(全10話)に続いて脚本を担当。8代・吉宗の遺志を継ぐ若き蘭方医たちが謎の疫病「赤面疱瘡(あかづらほうそう)」撲滅の道を切り拓く姿、開国・攘夷・大政奉還・江戸城無血開城という激動の時代を描く。大筋は原作通りのストーリー展開だが、ドラマは「医療編」「幕末編」と銘打つ。
仲間は、原作ファンの間で“最大の悪役”と言われ、注目が集まっていた11代将軍・徳川家斉の実母・一橋治済を演じた。
治済は8代将軍・吉宗(Season1・冨永愛)の孫。母と姉を毒殺し一橋家当主となり、大奥では10代将軍・家治の時代に老中・田沼意次(松下奈緒)を失脚させ、本草学者・平賀源内(鈴木杏)蘭方医・青沼(村雨辰剛)を死に追いやった。その後、家治を“毒殺”し、長男・家斉を11代将軍に就け、自身が実権を握るように。14話では、付き人・武女(佐藤江梨子)に毒を笑顔で差し出し、苦しむ姿に楽しそうな眼差しを向ける“サイコパス”ぶりを披露。さらに自身の孫である総姫と敦之助に「毒入り菓子」を贈って死に追いやった上で、「これが天下ってやつみたい。思ったより退屈」と発言するなど、非情で冷酷な人物。そんな難役を、仲間は見事に演じきった。
世のために貢献し続けた天才学者や、未来ある幼子を次々と死に追いやった治済だが、15話、ついに総姫と敦之助の母らによって“敵討ち”に遭い、壮絶な最期を迎えた。
不穏な笑みと闇を抱えるような眼差しで、“原作を超える悪役”を印象付けた仲間。同局を通じ、撮影を振り返った。
――ご出演発表時は「冷淡で非道な権力の亡者」という役柄説明もありましたが、オファーを受けた時のお気持ちはいかがでしたか。そして、実際演じられていかがでしたか。
仲間:幼い子どもを平気で殺めていく役だという情報は聞いていましたが、実際何を思っていて、どんな役なのかという細かいところまでは、オファーをいただいた時点ではわかりませんでした。
それでも台本を読み進めるうちに、思っていたより“ファンタジーな人”だなあと思えてきました。そもそも人の命を奪うこと自体がどうなんだというのは勿論ありますが、仕方なく人の命を奪うにしても、普通は理由があると思います。でも彼女が人を殺める時に、理由はなくて。権力を手に入れる上で邪魔な者は排除するというただそれだけで、淡々と人を殺せてしまうし、楽しみすら感じることもある…。狂気的な面を持っていて、世の常識が通じない、とんでもない人だなと思いました。
彼女の言動に関しては人として理解できない部分だらけではあるので、理解しようというよりも、どんな楽しみを先においてこの人は取りかかっているのかな…みたいな事を想像しながら演じました。
あくまで作り物の世界ですし、ここまで振り切れた人物だと、監督陣もとても楽しそうに演出されるんです。それに、そもそも時代劇というのは、誰も実際には見たことのない世界。ある程度自由に作れるものだと思っています。とんでもなく変わり者で狂気な治済なので、不謹慎ではありますが、ある意味わくわくしながら演じさせてもらいました。
――登場時は美しく穏やかな雰囲気だった治済が、徐々に不気味で恐ろしい存在に変化していく。その変化をどのように意識して演じられましたか。
仲間:役の魅せ方は、監督方ともお話をしました。前半は、本性が見えない、裏ではものすごい事をしているけれど、表面的には何を考えているか分からない雰囲気。でも実権を握った途端、タガが外れたように贅沢三昧をし、この力がどこまで及ぶんだろうと楽しんでいるかのような空気もあります。監督との間で、力を握るあたりから治済の本音を少しずつ足していこうというお話もありましたので、それまでは大人しく見えるように意識して演じました。