テンポの良い作風の映画で知られ、シネマ界に大きな足跡を残した川崎市ゆかりの映画監督・岡本喜八(1924〜2005年)の生誕100年を記念して、市アートセンター(麻生区)は12月まで毎月、岡本作品の上映会を開く。幕開けの一作は、監督自身が「一番好きな作品」と語っていた代表作「江分利満氏の優雅な生活」(1963年)。監督の誕生日である2月17日に上映される。
岡本監督は鳥取県出身で、明治大卒業後に東宝に入社。1950年代終わり頃からメガホンを持ち、暗黒街シリーズや独立
終戦の秘話をドキュメンタリータッチで再現した「日本のいちばん長い日」(67年)、人間魚雷を命じられ終戦を知らずに海に漂う男を描いた「肉弾」(68年)など、戦争をテーマとする名作は多い。一方で、3人組の若者に誘拐された老女が事件を逆手にとって関係者を
川崎市との関わりは深い。結婚後から亡くなるまで40年以上にわたり、同市多摩区に暮らした。日本映画大学(麻生区)の前身・日本映画学校の特別講師を務めたり、市民映画祭「しんゆり映画祭」に協力したりするなど、市の文化振興にも力を尽くした。
今年は生誕100年になることから、喜八プロダクションが「映画監督・岡本喜八生誕100周年記念プロジェクト」を発足。記念上映会はその一環で、初回の「江分利満氏の優雅な生活」は直木賞を受賞した作家山口瞳の半自伝的小説の映画化。戦後を生きる戦中派のサラリーマンの心情をコミカルに描く。
上映後には妻で映画プロデューサーの岡本みね子さん、次女で女優の岡本真実さんらによるトークイベントも。同プロダクション社長でもある真実さんは「喜八は地元愛が強く、ここから芸術を発信したいと考えていた」と明かし、「どの作品にも反戦や平和への願いがにじみ出ている。世界各地で戦争が起きている今だからこそ、見ていただきたい」と呼びかけている。
17日の上映は、午後0時20分から。一般1100円、高校生以下800円。問い合わせは、同センター(044・955・0107)へ。