漫才なのに会話なし!? 幼なじみコンビ「ろまんす」は“漫才の未開の地”を歩んでいる

漫才なのに会話なし!? 幼なじみコンビ「ろまんす」は“漫才の未開の地”を歩んでいる

ろまんすのさっぺ(左)とすえひろ

(東スポWeb)

“女芸人マニア”として知られているお笑いコンビ「馬鹿よ貴方は」の新道竜巳が、これから“馬鹿売れ”しそうな女芸人を紹介する。今回は、小5の時に出会った幼なじみで昨年8月にコンビを組んだ、ともにまだ25歳の期待の新鋭です。

 よく「息の合ったコンビ」なんて言いますが、このコンビのことを指す言葉かもしれません。

【プロフィル】
 コンビ名‥ろまんす
 所属‥浅井企画
 結成‥2021年8月
 個人名‥さっぺ
 生年月日‥1996年4月17日
 出身‥鹿児島県
 個人名‥すえひろ
 生年月日‥1997年3月12日
 出身‥鹿児島県

 出会いは小学校5年生ですから、幼なじみと言ってもいいでしょう。同じ高校に進み、特技も同じ水泳。さっぺさんが県大会1位、九州大会3位なら、すえひろさんも県大会1位、九州総体3位だそうです。

 そんな2人が昨年、コンビとしてお笑い芸人の道も歩きはじめました。この後、いろいろ苦労を重ね、挫折やコンビの亀裂がありながら、いつか栄光をつかんだら映画になっても不思議ではないほど興味深いコンビが出現し、私もワクワクしています。

 結成1年足らずですが、お笑いでは大手事務所である浅井企画に所属するのは、もちろんネタがおもしろくないとムリ。実際に見てもすごくおもしろかった! これまで見たことのない形の漫才です。

 正直なところ、新しすぎてまだ理解し切れていないところはありますが、それがさらなる魅力でもあります。動きや歌、躍動感が見応えあるなかで、漫才コントに入る時の表現に新しさがある。見ている側にとっては、歌ネタと思いきや、ショートコントと思いきや、また一発ギャグとも思いきや、と見ているうちに、気付いたら漫才が終わっている。そんな感じなんです。

 いろんな新しさを数多く取り入れている漫才ですが、特に一番すごいのは、この2人、漫才なのに会話をしていない。でもコントでもない。そこが特に、いい意味での違和感と新しさを感じた部分です。ただ楽しそうに演じているのが伝わってきて、ボケの数もすごく多い。見ている側は置いていかれないように見ていると、徐々に引き込まれていきます。

 私も芸歴23年目になり、数多くのネタのやり方を見てきました。方向性を見極めながら、このコンビはこういう方向で漫才をやりたいんだな、この漫才はこんなやり方でやっているんだ、などと考えることが多いです。しかしこのお2人の漫才を初めて見終わった時は、何を見たのか分からなかった。でも目的もあるし、おもしろいことをやっているのは分かる。正直言って、すごく悔しく思いました。

 ろまんすさんの一つひとつのやりとりが、いままで見たことがないものばかり。他の芸人と全くかぶっていない表現なので、今まで見てきたネタと重ね合わせて見られない。そういったところが、新世代の漫才というか、“漫才の未開の地”を探しながら活動しているように思え、見終わった時には幸せな気持ちにさせられてしまいました。

 芸歴が短いこともあり、動きのキレはまだそこまですごくはありませんが、一見するとアマチュアっぽい雰囲気を醸し出しつつ、ムダなセリフが全くない。台本の整理ができており、作りこまれている。動きで見る側を油断させておいて、実際に見るとムダがない。会ったことはないですが、まるで酔拳の達人に出会ったような気持ちにもなりました。ここまで言うとほめ殺しのように思うかもしれませんが、それほど漫才という芸は、形にするまでが険しく厳しい道のりなのです。

 私は幼なじみに「コンビを組もう」と持ちかけたらかんたんに断られたので、結束力、相性、あうんの呼吸など、欲しくても手に入らない財産を持っているろまんすさんがうらやましくてしようがない。お笑い界のトップを走るダウンタウンさんも幼なじみであることが魅力の一つだと思います。同じ人生を歩んだ人とおもしろいことを表現することに憧れがあるんです。幼なじみの2人のこれからの活躍が楽しみで仕方がないです。

 ☆しんどう・たつみ 1977年4月15日生まれ、千葉県出身、本名・濱島英治郎。平井“ファラオ”光と組む「馬鹿よ貴方は」として「THE MANZAI」「M―1グランプリ」で決勝進出を果たした実力派。緻密なネタ作りに定評がある一方、女芸人ナンバーワン決定戦「THE W」では、予選会場に足しげく通い、ほとんどの出場者のネタを見るほどの“女芸人マニア”。

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