将棋の藤井聡太王位(21)=王将など7冠=に渡辺明九段(40)が挑む第65期王位戦第1局は7日、名古屋市の日本庭園「徳川園」で2日目が指し継がれ、午後3時44分、同一局面が4度現れたことで無勝負となり、80手での千日手が成立した。先後を入れ替えて渡辺の先手で午後4時14分、指し直され、藤井が午後9時13分、136手で勝利した。王位5連覇による2つ目の永世称号「永世王位」の資格獲得へ好発進した。
王位戦7盤勝負における千日手指し直しは12年度、当時の羽生善治王位にこの日の立会人・藤井猛九段が挑んだ第1局以来12年ぶり。
敗れた渡辺だが、指し直し局には必勝の場面もあった。日本将棋連盟が運営する棋譜中継のAI評価値は、96手目から118手目まで渡辺の90%以上、100%を維持した指し手も多かった。「勝ちになったと思ったが、詰みが分からなかった。対局中、最後の詰みのところが見えてなかった」と終局後、嘆息した。
それでも千日手局の右王、指し直し局の相掛かりが通用した証しでもあった。藤井から「作戦巧者」の評価も得ていた。第1局前日の会見では「ずっと(タイトル戦に)出ているときは、出るのに慣れてしまって当たり前になっていた。この機会を大事に指したいという思いは、以前より強い」と語った。竜王、棋王の永世称号資格などタイトル獲得通算31期。昨春名人戦で最後の1冠を失って以来の晴れ舞台に、意気込みを新たにしていた。
藤井との過去5度のタイトル戦は1度として勝てなかった。とりわけ、その第1局は全敗した。対藤井の第1局連敗は6へ伸びたが、先勝の灯火が、瞬間的にかもしれないが、視界に入ったことは間違いない。
第2局は北海道函館市「湯元啄木亭」で指される。