■原作者も主演も“元アイドル”
同映画は、元SDN48メンバーで現在は作家として活動する大木の実録私小説が原作。仕事ナシ、男ナシ、残高10万円の元アイドル・安希子がひょんなことから赤の他人のおっさん・ササポンとルームシェアをすることになり、“奇妙な同居生活”を通して人生に行き詰まった安希子の葛藤と再生を描く物語だ。元乃木坂46の深川が安希子を、井浦がササポンを演じる。
公開を迎え、あらためて作品への思いを聞かれた深川は「安希子は元アイドルで、セカンドキャリアを今歩んでいるという境遇も同じで共通点も多くて、演じていながらも共感できることもいっぱいありました。劇中のササポンの言葉も、安希子にとってもすごく心がほぐれていったんですけど、私にとっても刺さる言葉が多かったので自分自身にも刻むような気持ちでいました」と演じながら主人公に共感していたことを明かす。
■セカンドキャリアで悩み「いろんな壁にぶつかって…」
今作は主演の深川も原作者の大木も元アイドルで、“セカンドキャリア”を歩んでいる最中。キャリアチェンジをした当時の葛藤や悩みについて、深川は「卒業を決めたときは『えいや!』っていうような、『何とかなる!』という勢いで出て行ったんですが、(卒業後)お仕事を始めた前半のほうがいろんな壁にぶつかって…。グループ名という看板が取れて個人として勝負していかないといけなくなった時に、俳優として経験を積まれてきた方々と同じ土俵に立つのが最初は恥ずかしくて。自分は何の技量もないですし、どうしていったらいいんだろうと悩んでいたので、最初の時期のほうがすごく悶々としていた気はします」と回顧し、俳優として新たなスタートを切ってすぐの頃の心境を吐露。
ちなみに、卒業を決めたタイミングではまだ次の事務所も決まっていなかったそうで「やりたいという強い気持ちはあったんですけど、本当にやっていけるんだろうかみたいな、先の見えなさの不安はありましたね」と振り返った。
一方、大木は「私はアイドル業界から会社員記者になったんです。会社員って専門用語が多いんですけど、ビジネスワードで『五月雨式に失礼します』って言われても…“五月雨”とは?と。『この企画とこの企画をブリッジして』とか、『企画をフィックスして』という言葉が分からな過ぎて、Google翻訳を使ってクライアントさんとお話しながら一人同時翻訳をして、意味を咀嚼してプレゼンをしたりしておりました。どの業種に入っても、郷に入れば郷に従えじゃないですけど、難しいですね」と、アイドル時代には耳なじみのなかった言葉に苦労したことを明かした。
映画「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」は、全国公開中。
◆取材・文・撮影=ブルータス・シーダ(STABLENT LLC)