この作品は第75回カンヌ国際映画祭オフィシャル・セレクションのクラシック部門にも選出され、先日現地で上映された。河瀬氏によれば、国際オリンピック委員会(IOC)の関係者からは「スポーツのドキュメンタリーを依頼したつもりが、人間ドラマが感慨深い」と称賛されたという。一方、先月都内で行われた完成披露試写会では、会場外で上映反対を訴えるデモが行われるなど、さまざまなリアクションを生んでいる。
3日から全国公開も始まったが、「知らない人からのネットの評価を見ていない。(物理的に)見る時間がないというのもある。(SIDE)A公開の直前まで(SIDE)Bをつくっていて、ほとんど寝ていないので」と河瀬氏。ただ、実際に鑑賞した人からの生の反響には手応えを感じたといい「自分の近くの人や(作品を)見たという人からの感想を聞いているだけだが、すごく可能性を感じている。20〜70代までの老若男女の口にすることが同じで『自分ももっと頑張らないとあかんな』と。『人生の金メダリストに私たちにもなれるんだ』と。この映画のさまざまなところに光り輝くものがある」とうなずいた。
今回の公式映画は大会がコロナ禍で史上初の1年延期となったこともあり、750日、5000時間という膨大な撮影期間を経て、2作品として上映される。「−SIDE:A」は国内外のさまざまなアスリートの物語を中心に構成された作品で、6月24日全国公開の「−SIDE:B」は組織委員会や大会関係者に焦点を当てたものになるという。
河瀬氏は「750日、5000時間の素材と向き合い、大きな壁にぶつかり続けていたが、絶対に諦めないと思った一番の理由はスポーツの力だった。アスリートの方が日々鍛錬しながら勇気、希望、熱いものを与えてくれる。こんな東京2020のアスリートの競演を多くの子供たちに生で見せたかったが、コロナもあって見せられなかった。できれば劇場で映画で見てほしい」と呼びかけた。