5月11日から放送開始したNHK総合の土曜ドラマ「%(パーセント)」(土曜後10・0、全4回)で主人公の職場「Pテレ」で働く編成部長・長谷部由美役を演じる女優、水野美紀(49)がオフィシャルインタビューに応じた。
同ドラマはローカルテレビ局「Pテレ」を舞台に新人テレビプロデューサー・吉澤未来(伊藤万理華)が新しい時代のドラマを作るため、車椅子の高校生・宮島ハル(和合由依)に白羽の矢を立てる物語。
水野演じる長谷部由美は藤谷(橋本さとし)の後任として、未来の企画を採択することになった新しい編成部長。未来が出した企画書を、全面的に書き直すよう指示する…という役どころだ。
−−「パーセント」に出演することが決まったときの心境は?
「このお話をいただいた時、プロデューサーさんから熱いメッセージをいただきまして。ドラマだけでなく、私の演じる役に対する思い入れも感じたので、とてもありがたく思い、すぐに出演を決めさせていただきました。台本が本当に、すっごく面白くて! ぐいぐい引き込まれました。ドラマを制作するプロデューサー目線で、ドラマの裏側を描くドラマって、意外と見たことがなくて。私も長くこの業界にいて、ドラマを作る0から1になる段階を、実は知らないんですよ。ドラマの企画を一本通して立ち上げる時に、こんな苦労や思いをしながらやっているんだと、すごく新鮮でした。それにプラスして、障害者を扱うという思い切ったテーマがあって、さらに障害者を当事者の方が演じるというのは、今のこの多様性の時代だからこそできるものであり、意義があるものだと思いました。きれいごとだけではなく、そうすることによって生まれるあつれきとか大変さとか、健常者と障害者、両者の苦悩を赤裸々に描いているんですよね。この作品の中にある人間ドラマが、プロデューサー奮闘記としての面白さと、デリケートなテーマを健常者・障害者の目線でどう持って行くんだろうというスリリングな面白さ、さらにその葛藤が描かれている面白さ、いろいろな面白い要素があると思いました」
−−長谷部を演じるうえで心掛けていることや役のみどころは?
「長谷部は、未来(伊藤万理華)が越えなければいけない壁として立ちはだかります。彼女もドラマの人というよりは、多角的な視点から考える立場の人なんだと思います。でも、新人を育てていこうとする立場でもあるので、私も結構、毅然とした態度で演じるようにしました。ダメなものはダメ、良いものは良い、時には主人公の未来を突き放すけど、それは単なる意地悪ではなく、根底には育てるための愛情があるということを意識しました。
このドラマは半分ドキュメントみたいな作品なので、実際に大変だったドラマづくりの経緯がリアルなところから描かれていて、制作するのはさぞかし大変だったと思うんです。こんなに、誰かの思いと信念を通して、その企画が通って作られていることがはっきり見えるドラマは初めてなので、私もすごく愛おしく感じて、『その思いに、ちゃんと応えなくちゃ!』って、むしろプレッシャーを感じながら演じていました」
−−撮影現場の雰囲気や共演者と印象に残っていることはありますか?
「未来ちゃん役の伊藤さんは、感情がぶわーっと表にあふれ出してくるようなお芝居をする人で、繊細に感情表現する女優さんだし、本当にすてきだなぁと思いました。障害のある俳優の方とご一緒しましたが、撮影現場は普段と変わらないですね。私は、撮影の中で、ハルちゃん(和合由依)と接する機会が少なかったので、『こういうときはどうするんだろう?』とか、わからないことだらけでした。移動の際のバスとか、ロケ先のお手洗いとか。私には、ハルちゃんにどんな不自由があるのかが全然わからないです。でも、移動のバスで、スタッフの方が車いすをたたんで、(お母さんが)ハルちゃんを抱っこして一緒にシートまで乗っていたり、段差のあるセットに車椅子ごと乗る時は、段差のある場所にスロープを斜めに渡して、車いすでも通れるようにパパっとセッティングされたりするんですよ。そういうところを一回見てしまえば、『あ、そういうふうに対応すればうまくいくんだ』ということがわかるから、自分もこういう協力の仕方をすればいいんだと発見できたので、これからもっとハルちゃんのような俳優さんと接する機会が増えたらいいなと思います。機会が増えれば、あっという間に広まっていくだろうし、現場も対応できていくようになると思うので。私ももっと身近に接していきたいなぁと思いました」
−−視聴者へメッセージを
「『パーセント』は、観る方の価値観を変える力のある作品で、そこがこのドラマの魅力だと思います。ドラマの在り方とか、テレビドラマの中での障害者と呼ばれる人たちの立ち位置とか、そういう価値観を変える力がある作品です。作る側も観る側も、何か新しい時代が始まる、新しい時代のドラマなんだなと感じることができると思います。お仕事ドラマよりも、一歩も二歩も踏み込んで、きれいごとだけではない現実も描いているし、問いかけられている部分も多く、あまり観たことのないドラマだと思うので、観る側の人たちにも新鮮で面白いと思ってもらえると思います」