橋本愛(26)が31日、都内で開催中の東京国際映画祭で開催された、同映画祭と国際交流基金との共催プログラム「交流ラウンジ」で是枝裕和監督(60)と対談した。その中で、思ったように演技が出来ず「才能がないんだな」とジレンマを抱える時間が10年も続いたと告白。20年の映画「グッドバイ〜嘘からはじまる人生喜劇〜」に出演した際、成島出監督(60)に「本当にヘタだよね」と言われ、一から演技を学んだことで「開けた」と明かした。
橋本は、是枝監督から「デビュー時に芝居が仕事だと明確にあった?」と聞かれると「辞めるつもりでいた。(デビュー時は)中学生…今しか生きていないし、自分でやろうと飛び込んだわけじゃない。流されてきた。おばあちゃんにまでなってやろう…と思っていなかったし、ここ3〜5年です」と答えた。その上で「成島出監督の『グッドバイ』で、お芝居を、もう1度、教えてもらった。自己流…研究はしていてもジレンマがあった。成島監督の現場で出来なくて、メソッドとか原始的に教えてもらった」と振り返った。
その上で「目指すことと、逆のことをしていた…でも、経験を積み重ねていけば、と自信がついた」と笑みを浮かべた。
橋本は、好きな芝居をする女優として「満島ひかりさん、深津絵里さん、樹木希林さん」と示した。その上で「ウソをつきたくない、というのがずっとあった。でもウソをつかないからこそ、心が動いていない。他者にになることが、どう頑張っても出来なかった」と、演技をしている中での具体的なジレンマを語った。
そして「でも、中途半端に評価されてきたら、いまさら教えてくださいとは言えないし、出来る顔をしなければいけないと」と、自分への評価や演技へのジレンマと、周囲の評価に大きなギャップがあったと語った。その上で「成島監督に『本当にヘタだよね』と言われて『そうですよね』って…そこで開けた」と続けた。
是枝監督から「キャリアのある女優に『ヘタだよね』と監督は言いにくいよね」と投げかけられると、橋本は「ヘタだと言われたくない人は、そこまでじゃないでしょうか? 私は言って欲しかった」と返した。続けて、同監督から「ウソをつくとは?」と聞かれると「そう思っています、というフリもしたくなかったし、出来るスキルもなかった。方法も分からず、ずっと悩んでいた。だから私が何を思っているかしか(映像には)映っていないな」と振り返った。
さらに、同監督から「橋本愛という存在を、どう撮るかという作品を求められる時期もあったと思う。お芝居と向き合う…良い時期ですね」と投げかけられると「10代、20歳前後の方が、ものすごい、お芝居するのを見て、すごいなと。自分はマイナスからのスタートだったなと」と笑みを浮かべた。
橋本は、東京国際映画祭で、2年連続となるアンバサダーを務めている。9月21日に都内で行われたラインアップ発表記者会見の席上で「今年は、もうちょっと自分に何か出来ることはないかと考えた」と口にした上で「日本の映画界に立ちはだかる壁について、自分の気持ちをお話しできたら。ハラスメント、労働環境の問題」と切り出した。その上で「一番、感じるのは世代間の溝。上の世代が必死に積み重ねたものを守り抜いていく姿勢は、とても素晴らしい一方、下の世代の声も聞こうと。お互いの声を聞き合う姿勢が、これからの物作りにおいて大事」と訴えた。さらに「世界に開かれる東京国際映画祭で、世界を見渡して日本のすてきなところ、改善した方がいいところを見つめ直すきっかけになれば」と、日本映画界改善のために発信していく考えを示していた。
その発言について、是枝監督に尋ねられると「現場に参加している者として、意見を発表した。よい反響が返ってきて、一個人の気持ちを発表しても友好的に受け入れてくれた。ちゃんと受け入れてくれたのは、今の時代の風。表だって取りざたされているハラスメント、労働環境の問題は、敏感に感じ取ってくださった。声を上げ続ける重要性を感じ取ってくださった。よい流れだなと」と語った。