【ニュースシネマパラダイス】 どうも! 有村昆です。東京都渋谷区の路上で母子が15歳の少女に刃物で刺されるという事件が起きました。逮捕された少女は「死刑になりたいと思い、たまたま見つけた2人を刺した。自分の母親と弟を殺す予行練習をしようと思った」と供述しているようです。またもや起きてしまいました。なぜ、このような無差別殺傷事件は定期的に起きるのでしょうか。今回は三浦友和さんの主演映画「葛城事件」から考察してみたいと思います。
三浦さん演じる葛城清と南果歩さん演じる妻の伸子は2人の息子をもうけた、ごく一般的な4人家族です。しかし、引きこもりになった次男が8人を殺傷する無差別殺人を起こし、死刑囚となるんです。次男と獄中結婚した女性が葛城家を訪ねて来て「幸せな一家だったのになぜ家庭崩壊してしまったのか」を回想する形で物語は始まります。
清は伸子に手を上げたり昔かたぎで、父親が怖すぎて家族全員が萎縮しちゃってるんですね。次男は引きこもり、長男も会社をクビになったことを言い出せないでいる。そんな清から逃げるために、ある日、伸子と次男は家出をします。質素ではあるんですが幸せな生活。しかし、そこに清が乗り込んで来てしまって…。その後、長男は自殺、伸子も精神疾患で入院し、残された次男は父親と2人では暮らせないという状況の中で無差別殺人を起こしてしまう。
その様をカメラが無機質に追っていて死刑になりたいから周りの人を巻き込むという発想になっていく過程をすごくリアルに描いています。
中流家庭なんだけど父親が偏屈で息子と仲良くないなんて、あり得る話じゃないですか。それぞれの家庭に何かしら問題があり、絶妙なバランスで成り立ってる。でも1個の歯車が狂った時に壊れてしまう。もしかしたらこの映画を見てる人が加害者になり得る可能性はないんだろうか、と。
見終わった後にホラーよりも恐ろしい現実を突き付けられた気になります。「凶悪事件を起こす犯人と、その家族というのは一般人と違う異常な人たちなんだ」で片付けてしまっていいのでしょうか。そこにフォーカスしたのがこの映画なんですね。新作映画で「俺を早く死刑にしろ!」が間もなく公開されます。入り口は似てるんですけど、こちらは衝撃のラストが待ってます。「カメラを止めるな!」ばりの伏線の回収があるので解説不要! オススメ作品なので、こちらもぜひご覧ください!
☆ありむら・こん 1976年7月2日生まれ。マレーシア出身。玉川大学文学部芸術学科卒業。ローカル局のラジオDJからキャリアをスタートさせ、その後映画コメンテーターとしてテレビ番組やイベントに引っ張りだこに。最新作からB級映画まで年間500本の作品を鑑賞。ユーチューブチャンネル「有村昆のシネマラボ」で紹介している。