『イメージの本』(2018年)を発表した時のジャン=リュック・ゴダール監督(当時88歳)(C)Casa Azul Films – Ecran Noir Productions – 2018
日本時間13日、フランスの複数のメディアがゴダール監督が死去したと報じると、エマニュエル・マクロン仏大統領もすぐに自身のツイッターで、「国の宝」「天才」という単語を用いて追悼した。マクロン大統領は昨年、俳優のジャン=ポール・ベルモンドさんが88歳で亡くなった際も声明を出しており、フランス映画界の巨星がまた一つ旅立っていったことを惜しんだ。
カンヌ国際映画祭事務局は、1962年の初出品から21本の映画が上映されたこと、映画祭を中止に追い込んだ1968年の事件、2014年に審査員賞を受賞した『さらば、愛の言葉よ』、そして、2018年に映画祭史上初、最高賞パルムドールを超える”スペシャル・パルムドール”を特別に設けて贈った歴史を振り返り、その映画人生を称えた。
スペインの俳優アントニオ・バンデラスは「映画の世界を広げてくれたムッシュ・ゴダールに感謝します」とツイートした。
ゴダール氏は、1930年フランス、パリ生まれ。ソルボンヌ大学時代、カルチェ・ラタンのシネマクラブで、フランソワ・トリュフォーやエリック・ロメールらと知り合う。1959年、長編初監督作『勝手にしやがれ』でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞。「ヌーベルバーグ」と呼ばれる映画革新運動の中心的な存在となり、即興演出など新たな手法で世界の映画界に革命を起こした。アンナ・カリーナ主演『女は女である』(61年)、『気狂いピエロ』、ブリジット・バルドー主演『軽蔑』(63年)など、数々の名作を生み出し、その鮮烈な映像美と世界観で多くの熱狂的なファンを生み出してきた。
その後、68年のパリで起こった五月革命をきっかけに、カンヌ国際映画祭を中止に追い込んだり、商業映画との決別宣言したり、政治色の強い作品を手がけた時期もある。68年には、ザ・ローリング・ストーンズのレコーディング風景を撮影した伝説の音楽ドキュメンタリー『ワン・プラス・ワン』を制作。この作品は昨年、日本でリバイバル上映されて話題になった。
79年に『勝手に逃げろ/人生』から再び商業映画の製作に復帰。『カルメンという名の女』(83年)でベネチア国際映画祭のグランプリを受賞。そのほか『ゴダールのマリア』(84年)、『右側に気をつけろ』(87年)、『ゴダールの映画史』(98年)など。2002年には高松宮殿下記念世界文化賞を受賞。2018年公開の『イメージの本』が最後の監督作品となった。

