モーニング娘。やAKB48らを育てた振付師でダンスプロデューサーの夏まゆみさんが先月21日、がんのため、61歳で逝去した。遺作となった3月発売の著書「人はいつでも、誰だって『エース』になれる!心とからだが輝く72の言葉」を出版したビジネス社が6日公表した。
夏さんは1993年に米ニューヨークのアポロシアターに日本人で初めてソロダンサーとして出演。98年、冬季長野オリンピックでは、「WAになっておどろう」の振り付けも考案した。その後、モーニング娘。やAKB48らを中心に、吉本印天然素材から、ジャニーズ、宝塚歌劇団まで、300組以上のアイドルや芸能人の振り付けを担当。モーニング娘。の「LOVEマシーン」(1999年)やAKB48の「ヘビーローテーション」(2010年)、「フライングゲット」(11年)などすべて夏さんの手によるものだ。同時に、NHK紅白歌合戦で20年以上にわたりステージングを担当し、「振付/夏まゆみ」と画面にクレジットが出るようにNHKにかけあうなど、振付師の地位向上にも貢献した。
近年は、ダンスの指導を通して自分が学んだことを、一般の人向けの教育や健康の分野に生かしたいとして、講演会や執筆活動にも注力していた。
03年に自身初となる、一般向けのダンスダイエットムック「夏まゆみFun-Key Dancing Diet」(KKベストセラーズ)を発売したが、当時の担当編集者はこう話す。
「夏先生は一般の人向けのダンス教室も主宰していて、実際に半年くらい初心者クラスに通ってお願いし続け、出版にこぎ着けました。先生は、ダイエット用のダンスの考案から衣装に至るまで、非常に熱心にやってくださいました。ダンスの普及にすごく情熱を持っていて、当時、ダンスが学校の正規科目になることもすごく喜んでいました」
夏さんは、演出のためにやむを得ないこととは言え、テレビ東京系の「ASAYAN」で、モーニング娘。の“鬼指導者”として描かれていたことに、ひどく胸を痛めていたという。実際の夏さんは非常に繊細で、女性向けのダンスムックという初めての分野に挑戦する編集者を前に、厳しくもどこまでも優しい人柄だったという。
■満身創痍でダンス指導
そのムックではDVDもつけ、スタジオを借り切り、バックダンサーもつけ、かなり大掛かりな収録をして、夏さんにも出演して踊ってもらった。しかし、実はその段階で、長年のダンスで酷使し続けた夏さんの体は、左膝半月板切除手術や頚椎と腰椎のヘルニアなど満身創痍で悲鳴をあげていた状態だったという。
「収録本番の直前に、スタジオの外の誰もいないところで、太陽に向かって両手をかざして、目をつむっている姿を目にしました。ぼんやり見ていたら、『こうしていると、あらゆる生命の源である太陽のパワーを目いっぱい、吸収できるよね』と話されていました。本当は相当痛みがあって、とても踊れる状態じゃない中、精神統一をされていたのでした」(担当編集者)
日本のアイドル文化の礎を築き、ダンスの普及に貢献した第一人者は、あまりにも早く旅立ってしまった。