役所広司「PERFECT DAYS」高崎卓馬氏、スピルバーグ、タランティーノら調査したことも…

役所広司「PERFECT DAYS」高崎卓馬氏、スピルバーグ、タランティーノら調査したことも…

トークイベントを開いた映画「PERFECT DAYS」共同脚本・プロデュースの高崎卓馬氏(右)と「SWITCH」新井敏記編集長(撮影・村上幸将)

(日刊スポーツ)

役所広司(67)が世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭(フランス)で男優賞を受賞した主演映画「PERFECT DAYS」(12月22日公開)で、ヴィム・ヴェンダース監督(78)と共同脚本を務め、プロデュースした高崎卓馬氏(54)が21日、東京・代官山蔦屋書店でトークイベントを開いた。同日発売の雑誌「SWITCH」で作品を特集し、かつヴェンダース監督の取材を続けてきた、同誌の新井敏記編集長と1時間半にわたって対談した。

「PERFECT DAYS」は、ヴェンダース監督が東京・渋谷を舞台に役所を主演に撮影した最新作で、自ら脚本も担当。製作は22年5月に東京で開かれた会見で発表された。世界的に活躍する16人の建築家やクリエイターがそれぞれの個性を発揮して、区内17カ所の公共トイレを新たなデザインで改修する、渋谷で20年から行われているプロジェクト「THE TOKYO TOILET」のトイレを舞台にするため11年ぶりに来日。シナリオハンティングなどを行い、撮影は全て東京で行った。役所は、渋谷で公衆トイレの清掃員として働く平山を演じた。製作国は日本で「ユニクロ」を中心とした企業グループファーストリテイリングの柳井正代表取締役会長兼社長の次男・柳井康治取締役がプロデューサーを務め、個人プロジェクトとして21年に立ち上げた有限会社MASTER MINDが企画発案、出資、製作、映画初プロデュースを手がけた。

高崎氏は「柳井さんと出会い、渋谷のトイレを改装するプロジェクトをやられていて、素晴らしいトイレが出来ているんだけども、ここから先、どうなっていくか。みんながトイレの価値を感じて、共感し、大切にしてもらうには、どうしたら良いんだ? というのが会話の始まり」と、柳井氏と話し始めた当時を振り返った。「建物を作るだけでなく、清掃する人のユニホームを作るなど、いろいろなことをやられていて。公共物を、人はどういうふうに大事にしていくかを日々、考えられていたところに僕が巻き込まれた」と、企画に関わっていったきっかけを語った。

そして「僕らが会いたい人、一緒にやりたい人を探した時、ヴェンダースに相談した。そもそも、映画を作ろうという相談ではなく短編の映画を撮りませんか? というアプローチ」と、ヴェンダース監督にコンタクトを取った当初は短編映画の企画であったと説明。「それが(長編)映画になったぞ、カンヌに行くことになったぞ、役所さんが主演男優を取ったぞ、米アカデミー賞国際長編映画賞(旧外国語映画賞)の対象になっているぞと。いろいろな人で雪だるまを押していく中で、固まりが大きくなった」と続けた。

そもそも「いつまでに何かをやらなきゃいけないという仕事じゃなかった。自分たちが、これだと思うものが出来るまで動かさない感じ。割と雑談ベースな感じで世界の捕まえ方、最近、気になっていることを話していた」と、今回の企画が仕事でさえなかったと説明。「渋谷系という音楽があって、トイレに1こ1こ、音楽を付けたら面白いかもしれないと企画にしようと思った」などと音楽を絡めた企画も当初、あったと明かした。「コンセプトを持って、コントロールした方が良い。今の東京をベースにした、架空の映画があって。そのサントラとして渋谷系の音楽がまとまっていたら、どうだろうか?」などとテーマを考える中、柳井氏が「(架空の映画というテーマの)真ん中、やろうよ」と言ったことで、映画を作ることになったという。

さらに、柳井氏から「せっかく作るなら、みんながワクワクする座組がいい。海外の人と組んだ方が良いんじゃないか?」と提案がなされた。その中で「スピルバーグやタランティーノが、東京のトイレの映画を作ったら、ワクワクしますよね」などと話が展開。スピルバーグにどうやったら連絡出来るのか、あと1本しか撮らないと言っているクエンティン・タランティーノ監督が、どうなっているのかと1つ、1つ調べていったという。

高崎氏も、さすがに「めっちゃ時間かかるわ、お金かかるわ、コントロール出来ないわ…みたいな、怖い未来が待っていそうな感じがした」中、資料の最後のページに「ヴェンダースと写真小説集を作る」という企画があったという。その企画を提案したところ、柳井氏もヴェンダースが好きだったことで「ヴェンダース、1チャン、いってみようか」となり、高崎氏が断りにくいような企画、柳井氏が熱い思いを、それぞれ手紙にしたため、ヴェンダース監督に送ったという。

高崎氏は、新井氏から最初からヴェンダースに当たろうと決めていたのか? と聞かれると「もともと話があって、実現するための監督を決めるということじゃなくて、何も決まっていない状態。トイレの清掃員を主人公にした物語を作ろうと。(作品の)どういう上がりが良さそうだとか、公開規模とか全く考えていない。映画サークルの2人が、和気あいあいとメモを書いていたみたいな感じ」と答えた。その上で「すごいアマチュアな始まり…その分、ピュアだったと思う」と振り返った。【村上幸将】

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