文化財庁は「銀製李花文花瓶の底面の刻印『小林』は、東京の小林時計店製を表すことが確認され、登録を抹消する」と説明した。
小林時計店はかつて東京に店を構えていた老舗の時計店で、時計以外にも銀製品や装身具などを製作し、宮内省(現宮内庁)にも納入したことがあったとされる。
銀製李花文花瓶は国立古宮博物館が所蔵する。首が細長く、膨らんだ胴部中央は大韓帝国の王室紋章であるスモモの花(李花文)に飾られている。
文化財庁は2009年に登録文化財に指定した際、「王室で使用する工芸品を製作するため設立された李王職美術品製作所で1910年代に製作」と解説していた。
だが底面に「小林」と刻印されているため、文化財の現場では調べ直す必要があるとの意見も根強かったとされる。
昨年末に調査に参加したある専門家は「刻印を見ると小林時計店で製作したことが明白だ」とし、「李王家が注文したものか商業的な理由で製作販売したものか分からないが、朝鮮工芸の脈を受け継ぐ、あるいは王室の生活像を示す歴史的な価値があるものとは見なし難い」との見解を示した。別の専門家は「『李花文がある工芸品は李王職美術品製作所の製品』という誤った認識によって国家登録文化財に登録された、明らかな間違い」だったと指摘した。
2009年の文化財登録に先立つ調査は、文化財庁が韓国伝統文化研究所を通じて外部に依頼し、工芸分野の専門家から助言を受けた。その際に刻印への言及はなかった。
銀製李花文花瓶の文化財登録は抹消されたが、文化財庁によると、国立古宮博物館で引き続き所蔵、管理する予定だ。同博物館は李花紋がついた銀製工芸品を購入するなどして収集している。