■「弱者を助けるためにこそ格差が大事」
東京大学経済学部を卒業し、米マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号を取得したという成田氏。現在はイェール大学で教べんをとる傍ら、ソニーやYahoo!、サイバーエージェントといった企業との共同研究に取り組んでいるという。今回の対談は、林先生のたっての希望で実現した。
その言動は、とにかく個性的。輝かしい受賞歴が紹介されると、成田氏は「賞とかはどうでもいいかな」と言う。続けて「人から嫌われるとか興味を持たれないぐらいの方が、自分は新しいことをやっているんじゃないかなって気がする。人から理解されたり褒められるような普通のことをやっていてはいけないって感じます」と真意を語った。
所得格差について意見を求められると、「誤解を恐れず言うと、あんまり格差とか気にしない方がいいんじゃないか。というよりむしろ、どうやったら格差を作り出せるかという問題を考えたほうがいいんじゃないか」と、こちらも意外な回答。
日本がアメリカなどに比べて経済成長や格差拡大が緩やかであることを示すデータを踏まえ、「日本はここ数十年間で大きな産業みたいなものも、新しい富もほとんど生み出せなかった。全体として、お金持ちも貧乏人も同じように貧乏になっている、“一億総貧困社会”みたいなものが生まれてしまっている」と指摘。
「(長期的に見ると)弱者を助けるためにこそ、稼ぎまくって納税しまくる人を作り出すことが大事なんだと思うんです。一時的に格差を作り出して、富を蓄積できる人を増やすことが大事なんではないかな」と持論を展開した。
■「こんなインタビューなんか見るな」その心は
データを分析することで、既存の価値観にとらわれずに真実を見抜く成田氏。既存の価値観から自由になるためには、どうすればいいのか。
これに「自分がいる業界と全然違う世界と関わってみるとか、全然違う世代の人と突然関わってみる、みたいな経験が大事なのかなと思う」「そういう経験をすればするほど、凝り固まった価値観みたいなものを少しキャンセルできる」と回答。
林先生は「キャンセルできなくて縛り付けられたまま動くことができない人がたくさんいるって言うのは分かる気がしますね」と頷き、中島健人らスタジオメンバーからも「格好良い!」の声が上がった。
既存の価値観にとらわれない考え方を随所に見せた成田氏。林先生から「これからの時代生きていく若者、日本人に最後のメッセージを」と求められると、「若者に対しては、こんなインタビューなんか見るなってちょっと言いたいです」と発言も。
だが、その心は「新しい時代を切り開く人って、既成の勢力とかそんなものぶった切って進んでいくぐらいの人であってほしいじゃないですか。そう思うと、このインタビューをメモとって聞いたりはせずに、なんか老人がぺちゃくちゃしゃべってるわ、ぐらいにあざけ笑ってくれる若者がいてくれたらいいな」とメッセージ。
そして、「僕たち所詮、自分以外の存在にはならないじゃないですか。お手本にどう近づくかを考えるより、それと自分は違う存在なんだっていう違いを認めて、近づこうとする欲望に抗って、今自分のいるところ、自分の中の自分の個性を見つめ続ける。それを人に向かってどう説明したり、叫んだり、表現したりするかを考えることの方が重要なんじゃないかな。どんな人もその人の個性を突き詰めると“変な人”になれるんじゃないか」と金言を送った。