参院選特番“池上無双&太田砲”ともに不発の果て…まるで安倍元首相の“弔い番組”

 自民党が単独で改選過半数を確保する大勝となった今回の参院選。投票日直前(8日)の安倍晋三元首相の銃殺事件の影響で、開票と同時に一斉に始まった民放各局の選挙特番は、放送ジャーナリストの小田桐誠氏が「どの番組の司会者も奥歯に物の挟まったような言い方になってしまっていたのは否めない」と言う通り、安倍元首相の“弔い番組”の様相を呈していた。

 それも影響したか、選挙特番のたびに、与野党問わず政治家へ忖度なしに切り込むスタイルで“池上無双”と喝采を浴びてきたジャーナリストの池上彰(71)や、昨年10月の衆院選の選挙特番で初司会を務め、舌鋒鋭く政治家に迫り炎上した爆笑問題の太田光(57)も、今回は控えめだった。

「池上彰の参院選ライブ」(テレビ東京系)で池上は、当選した元「おニャン子クラブ」の生稲晃子(54)がインタビューに応じなかったことを「政治家としての責務、責任ではないのかなと思いますけどね」と批判。山本太郎に対しては「5カ月で参議院に出るというのは、衆院選で投票した方への裏切りになるんじゃないか」という質問を投げかけてはいたが、番組終了間際に行われた視聴者アンケートで「(今回の)“池上無双”の切れ味は?」と問うと、「鋭かった」が44%、「鋭くなかった」が56%という結果に。視聴者は物足りなさを感じていたようだ。

 池上は「特番の使い方、やり方を考え直した方がいいんじゃないかという意見もありまして、これまでに比べて抑えているところもありました。それが切れ味がなくなっている、そういうところなのかなと思っています」と今回の番組へのスタンスの難しさをにじませた。

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安定の有働由美子&櫻井翔「ZERO」

 一方、前回の選挙特番で、自民党前幹事長の甘利明に「ご愁傷さまでした」、二階俊博に「いつまで政治家続けるつもり?」などと歯に衣着せぬ物言いで迫り、賛否を呼んだ「選挙の日2022」(TBS系)の太田光。

 投票前の7日に出演した「THE TIME,」(同)では、司会の安住紳一郎アナ(48)から、「前回の選挙の後、落ち込んでいる様子を私、見ましたよ」と暴露された。太田は「落ち込んでません!」と返していたものの、前回より明らかにトーンは控えめ。ツイッター上では「太田さん抑えてる」などのコメントが見られた。

 視聴率を見ると、全体のトップはNHK「参院選開票速報 2022」の14.4%。民放の順位は以下の通りだ(ビデオリサーチ調べ・関東地区・平均世帯視聴率)。

①日本テレビ「zero選挙2022」9.4%
②「池上彰の参院選ライブ」7.1%
③テレビ朝日「選挙ステーション2022」7.0%
④TBS「選挙の日2022」6.4%
⑤フジテレビ「Live選挙サンデー」5.7%

 有働由美子(53)&嵐の櫻井翔(40)の布陣で挑んだ「zero」が選挙特番民放3連覇となるトップ。太田の「選挙の日」も、衆院選の時の民放最下位から浮上した。前出の小田桐氏はこう話す。

■課題設定機能が大切

「各局とも、工夫を凝らしてやっていたのは分かるが、やはりもっと事前に、今回の参院選の争点は何なのか、投票によって何が変わるのかということを明確にして報道し、当日の選挙特番では、それを含めて検証するべきだった。今回の事件で『安倍政権がしてきたことの検証』への機運はしぼんでしまった。改めて、選挙報道における事前の“アジェンダセッティング(課題設定)機能”の大切さを痛感しました」

 終わってからなら何でも言えるのである。 

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