本映画祭では、「U-18期待枠」「プロモーション部門」「ショートアニメーション部門」「ショートフィルム部門」に分けて合計19作品が上映された。
20分以内のショートアニメーション作品のなかから1作品に贈られるTOHO animation賞に選ばれたのは、『いにみにまにも』(石川ななみ/武蔵野美術大学)。石川は「すごく緊張して待っていたのでうれしいです。(グループ制作で)大学のみんなと撮って、初めての監督だったんですけど、こういう賞をもらえてすごく光栄に思います」と感謝を表した。
全上映作品のなかから1作品に贈られるGEMSTONE賞に選ばれたのは、青春ムービーの『ボウル ミーツ ガール』(関駿太/日本大学)。関は「賞をいただけてすごくうれしいです。自分は別に就職もしなくて、大学を卒業するんですけど、フリーターかな?と思っていたので。映像制作に携われるということですごくうれしい」と喜びを噛み締めていた。
全上映作品のなかから1作品に贈られるROBOT賞に選ばれたのは、ストップモーションアニメーションで描いた『まよなかの探しもの』(武田明香里/東北芸術工科大学)。武田は、ショートアニメーション部門の準グランプリでも選出され「2つも賞をいただけると思っていなかったので、本当にすごくうれしいです!」と壇上で喜びを爆発させた。
そして、ショートアニメーション部門のグランプリを受賞したのは、UFO探しという行動を通して男女2人が互いの悩みに触れていくという内容を描いた『エスケイプ』(エスケイプ相談会/東京工芸大学)。エスケイプ相談会は、「作ることに携わってくれた先生方と、一緒に作った人たちにすごく感謝しています。そして、これからも頑張りましょうって言いたいです」とコメント。
プロモーション部門のグランプリは、『映画戦士 ポップアンドコーク』(中谷龍/浜松学芸高等学校)が受賞した。また、準グランプリは、『With POP & COKE』(森崎裕貴※「崎」は正式には「たつさき」/立命館大学)が受賞。森崎は、「たった2分間だったんですけど、その2分間が大きなスクリーンに上映され、とても幸せな時間でした」と笑顔を見せた。
最後のショートフィルム部門で、準グランプリとして読み上げられたのは『變化拍(ビアンファパイ)』(林昱廷/台北メディアスクール)。グランプリとして選出されたのは、GEMSTONE賞も受賞した『ボウル ミーツ ガール』(関駿太/日本大学)だった。関は「仲間と1年かけて作りました。(会場に)みんな来てくれています。本当にうれしいです。さっき言った通りフリーターですので、(こうした賞金や副賞は)貴重。ちゃんと使いたいと思います」と、笑いを交えながらコメントしていた。
審査員を務めた東宝 TOHO animationアニメ事業室長の武井克弘氏は、「皆さんのレベルが高くて驚きました。TOHO animation賞を獲った『いにみにまにも』もすごくいい作品で。全カット、スクリーンショットを録って、ポストカードやTシャツなどにしたいくらいの完成度でした」と称賛。
一方で、アニメーション監督の立川譲は、「ちょっと予想とは違ったって言うか…」と首を捻る。続けて「これは個人的な感想なんですけれども、もっと学生ならではの…なんか“はっちゃけた”テーマの…『俺たちまだ社会に出ていないし、よくわかんないけど、とりあえず自分たちが作りてぇものを作りました!』っていうものをバーンって出してくるかと思いきや、結構商業アニメでもありそうなテーマの内容が多いなっていうのは率直に感じたところ。これから皆さんがどの業界に進むかわからないですけど、自分はもう商業の沼に身体が半分浸かっている状態なので、『これから世の中に出ればそういうものを散々作ることになるよ』っていうのはちょっと思いまして。でも、それはそれでいまの時代を反映しているのかな?とも思いました」と感想を語っていた。
最後に、映画監督の耶雲哉治は、ROBOT賞とショートアニメーション部門の準グランプリを獲得した『まよなかの探しもの』のタイトルを挙げ、「このストップモーションのアニメが1番、作っている人の人柄が出ているなと思いました。学生が今、商業ではなく“自分の作品”を作るっていう時に、(画を)『動かしたいんだ!』みたいな、そういう衝動を作品に込めていたということで、すごく魅力的に見えました」と感想をコメント。
反対に、ショートフィルム部門のグランプリとGEMSTONE賞を受賞した『ボウル ミーツ ガール』については「商業的な狙いと近いんですけど、“20分以内の実写作品”という規定があるなかで、20分間、1秒も退屈させない作り方をしているっていうことがすごく、手練れっていうか。でも手練れなだけじゃなくて、すごく情熱というか、泥臭い熱さみたいなものも感じて。それをちゃんと観ている人に感じさせる力と技があるっていうのがすごくいいんじゃないかなと思いました」と評価していた。
取材・文/平井あゆみ