【桧山珠美 あれもこれも言わせて】
今期の冬ドラマが出そろった。その中で、もったいないと思うドラマが2本ある。
ひとつは櫻井翔主演「大病院占拠」(日本テレビ系、土曜午後10時)。日本が誇る大病院が突如、鬼の面をかぶった謎の武装軍団「百鬼夜行」に占拠されて櫻井演じる捜査官が人質を救うため犯人に立ち向かっていくストーリーで、24時間の事件を全10話で描く。
テロリストは全員鬼の面をかぶり、エンディングでも名前にモザイクが入っているなど正体は明かさず。
が、口元だけは出ていて、リーダーの青鬼が、どう見ても菊池風磨ではないかと早くもバレてしまったのはご愛嬌か。
最近の考察ばやりで鬼グループの俳優予想は案の定過熱し、これも作り手の思うツボだろう。
視聴者としてはハラハラドキドキ楽しいのだが、残念なのが主人公、武蔵三郎役の櫻井。正直、この手のアクションドラマには向いていない気がする。爆弾搭載のドローンに追いかけられているのに緊迫感はさほど感じられず。これが岡田准一だったらと、つい妄想してしまう。
今でこそ高学歴のジャニーズは多いが、先鞭をつけたのは櫻井で、アイドルをやりながら慶大経済学部を卒業したのはすごい。キャスターやバラエティーのMCもこなし、ここ数年は日テレの選挙特番の顔でもある。これ以上何を求めるのか。櫻井には、彼しかできないことが山ほどあるのに。
橋爪功&高橋一生を相手に本田翼の力量不足は明らか
もう一人、残念なのは「6秒間の軌跡〜花火師・望月星太郎の憂鬱」(テレビ朝日系、土曜午後11時30分)の本田翼。父の橋爪功と息子の高橋一生が営む花火店が舞台。橋爪と高橋は2021年のNODA・MAP舞台「フェイクスピア」で共演して意気投合、橋爪自ら「一生とドラマをやりたい」とプロデューサーに持ちかけて実現した。「フェイクスピア」を見に行ったものとしてはうれしく、楽しみだった一本だ。
橋爪と高橋の丁々発止はなんとも心地よく、父は亡くなった後、息子にしか見えない幽霊として再び登場するが、幽霊もちゃめっ気があって橋爪にぴったり。そこに登場するのが本田で、父の死後一人になった息子のところに客として現れ、住み込みで雇ってほしいと押しかけてくる謎の女性・水森ひかりを演じる。
出演者は主にこの3人で、3人芝居のようなもの。そんな中で、橋爪、高橋と比べ、本田の実力不足は歴然だ。これがもし満島ひかりや安藤サクラ、黒木華だったらと思ってしまう。本田はモデルとしては人気だし、CMでも実にチャーミングに見える。そちらに力を入れてはどうだろうか。
いまどきマルチタレントははやらない。2人とも新境地開拓などと欲を出さず、それぞれの道を極めてほしい。
(桧山珠美/コラムニスト)