育英高校のブラスバンド部でサックスを始め、兄と同じく米国の名門バークリー音楽大学に留学した。帰国後は音楽教室「オゾネミュージックスクール」の講師として後進の育成に力を注ぎ、これまでに100人を超える生徒を指導。1993、94年には真が率いる「ニューポート・ジャズ・オーケストラ」の大阪・福岡ブルーノート・ツアーに参加した。
長年アルバムを制作してこなかった理由について、啓は「力不足だった」とストレートに語る。バークリー時代、世界的サックス奏者、ダニー・マッキャスリンの演奏を目の当たりにし、実力差を痛感したという。
表舞台に立つことより、練習を優先させてきた。若い頃、真から言われた「どんな人間にも、人生で1回か2回は絶対に大きなチャンスが来る。問題はそのチャンスが来た時に用意できているかどうか」という言葉が、常に頭にあった。
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アルバム制作を決意したのは2021年7月。病室で母親の美智子さんが息を引き取る直前、とっさに口から出た。「おふくろ、兄貴とおれでCD出すからな」。機は熟していた。「この年になってようやく、どう吹いたらお客さんが感銘してくれるか、少しは分かってきた気がする」。アルバム名の「ユニゾン」は、葬儀の最後にお棺を閉める際、真と啓が偶然にも同時に「ありがとう」と発したことに由来する。
「僕の音楽の原点はカーペンターズ」と語る啓。その影響下に、アルバムにはメロディアスで親しみやすい作品が並ぶ。1曲目の「エッグ・オン・ザ・ルーフ」は、少年時代の夏の思い出を溶け込ませた、ノスタルジックな曲だ。炎天下、兄弟で民家の瓦屋根に卵を投げて目玉焼きを作ったという、刺激的ないたずら体験を基に作曲した。
真が絶賛した叙情的バラード「アクエリアス」などのオリジナル曲に加え、「イン・ア・メロウ・トーン」などスタンダード3曲も収録。アルバムの最後は、兄弟の思い出の曲、ミッチェル・フォアマン「ゴージャス」のデュオで飾った。
啓は「いろいろな形の、リスナブル(聴いて楽しい)なジャズを吹いた。ジャズなんか分からないという人でも『これなら聴ける』と感じてもらえるのでは」と自信を見せる。
■NHKで27日ライブを放送
21日午前3時台、NHKラジオ第1「ラジオ深夜便」、27日午後7時〜57分、NHK総合(兵庫県内)「ジャズライブKOBE」で、小曽根啓、小曽根真らによるライブが放送される。4月には、アルバムの発売記念ライブを神戸、東京で予定する。