■市民200人以上が出演、構想から4年
地元商店街にできた暴力団事務所を、住民や市職員らが立ち退かせ、建物を映画館として再生させるまでを、ドラマとドキュメンタリーを交え描いた約90分の人情コメディー。
映画館はもちろん、市役所や学校など市内各地で撮影され、200人以上の市民がエキストラで出演。新型コロナウイルスの影響で撮影・製作が大幅に遅れたものの、構想から4年で完成にこぎつけた。
9月30日にあった上映前の式典で、近兼監督やキャストがレッドカーペットを歩き舞台へ。それぞれ、撮影の思い出や苦労話を語った。
近兼監督は、住民らが使い道がなく困っていた元組事務所について、「なら映画館にしたら?」という自身の何げない一言で「映画館復活プロジェクト」が始まった経緯を説明。東京の映画仲間らに話したところ、「面白そうだから、それを映画にしたら」と言われ、映画館づくりと映画製作を同時進行することになったとの裏話も披露した。
「これまでに撮った映画で、これほど苦労した作品はない。(コロナ禍で)もうあかんかなと思ったのは2度や3度でないが、みなさんに助けていただいた」と感謝を伝えた。
■「映画愛も丹波愛も込めた」
作品には、地域の歴史や地理への考察もちりばめられ、丹波市のPRにもなっている。ユーモアもたっぷりで、会場は笑いに包まれた。
鑑賞した男性(34)は「面白かった。移住してきて、まだ丹波市をよく知らないので、水分れや舟運など勉強にもなった」と満足げ。「実際に映画館がオープンして、映画までできるなんて、本当にすごい」と感動を語る市内の女性会社員(48)も。中央小5年の女児(10)は「自分も(スクリーンに)映っていたし、よく知っている場所が登場して親しみがわいた」と笑顔だった。
上映会には、日本映画監督協会理事長で、「釣りバカ日誌」シリーズや「空飛ぶタイヤ」を手がけた本木克英監督らも駆け付けた。上映会後、取材に応じた近兼監督は「映画愛も丹波愛も込めた。本木監督らには(シチリアの映画館を舞台にしたイタリア映画の)名作『ニュー・シネマ・パラダイス』みたいだね、と言ってもらえた」と喜び、「丹波で今後も映画を撮り、ここを映画のまちにしたい」と力を込めた。
作品は、「ヱビスシネマ。」で来春、先行上映し、以降、順次全国で巡回公開する予定。