歌舞伎俳優の中村扇雀が27日、東京・港区の増上寺光摂殿で営まれた母・扇千景(おおぎ・ちかげ、本名・林寛子=はやし・ひろこ)さん(享年89)の葬儀・告別式で、扇さんから政治家の後継者に指名されていたと明かした。
祭壇の前で兄の中村鴈治郎らと取材に応じた扇雀は「20歳のとき大学に行っていて、母に国会議員になれと一度言われたことがありまして。今だから言えるんですが、先日亡くなられた中山太郎先生の秘書にもう頼んであるから、どっかに就職してからあなたは秘書になれって言われて」と告白。当時、扇雀は大学で法学部の政治学科に在籍していた。
すでに歌舞伎俳優として舞台に立っていたこともあり「一晩考えさせてほしい」と返答。そして「政治家は母の天職なので、僕の天職は歌舞伎の血を代々引き継いでいる歌舞伎役者が僕の天職だと思うので、申し訳ありませんが、お断りしますと次の日に母に申しました」。扇さんは残念そうにしていたという。
扇さんは息子たちに負担をかけないよう選挙活動を手伝わせることはなかったという。扇雀は「国会議員はやはり母の天職だったと思います。それをまっとうできて、歌舞伎役者の女房としてもまっとうできて、ほんとうに希有な人生だったと思うのですが、まあまあ、十分に納得して、旅立ったと思いますので、今頃は『あと任せたわよ』と言ってると思います」と思いを巡らせた。