歌舞伎俳優、中村勘九郎(41)中村七之助(39)が16日、大阪市内で、姫路城世界遺産登録30周年記念として行われる「平成中村座 姫路城公演」(5月3〜27日、姫路城三の丸広場)の取材会に臨み、父の故中村勘三郎さんからの「宝物」であり「宿題」にかける思いを語った。
勘九郎は「父は亡くなる最後の演目が平成中村座でしたし、新しいものを作っている人と思われる面も多かったと思う」と言う。
発想が柔軟で、創造力にもたけていた勘三郎さんは、新進役者のイメージも強かった。とはいえ、もともとは、江戸時代の芝居小屋と、その街の空気を再現しようと、勘三郎さんが始めた「平成中村座」。古典の世界の再現に努めてきた背景もある。
勘九郎は七之助とともに、12年12月に勘三郎さんが亡くなった後、父の思いを受け継ぎ、上演してきた。それゆえ、勘九郎は「僕たちが一生をかけて守り、発展させていかないいけない。父から宝物と宿題をもらったと思っています」との思いを口にした。
勘三郎さんは57歳で亡くなっており、勘九郎は「今生きていても67歳。早すぎた。喪失感はすごかったですが、皆さまの支えでここまでこられた」。七之助も「父が生きていれば…と、悔しい思いもありますが、この10年、父に恥じないように突っ走ってきました。自信を持って父に顔向けできる」と語った。
奇抜とも表されるアイデアマンでもあった父にならってか、今回は、国宝の姫路城で開催となった。関西圏では15年の大阪城以来、8年ぶりとなる。
演目には「播州皿屋敷」「天守物語」と姫路城を舞台にした作品も入れた。
「天守物語」は、存命の歌舞伎役者では、坂東玉三郎しか関わっておらず、今回、玉三郎に演出を依頼し、快諾された。
コロナ禍を乗り越えての開催、そして玉三郎の協力を得て、七之助は「盆と正月がいっぺんにきたような感じ」と思いを表現した。
すでにチケットは完売しているが、立ち見席も発売予定で、劇場周辺の“長屋”も特長のひとつだ。
勘九郎は「江戸時代にタイムスリップしたような街で、多分、場内飲食もOKになる。かんざし、絵芝居と、江戸の職人も呼びますが、地元の職人さんにも来てもらい“三十軒長屋”になりました。お練りも予定しています」と、にぎわいを約束していた。