この世紀の対決、軍配が上がったのは『バービー』の方。4243館で公開され、週末3日間の興収は1億6202万ドル。これは北米の歴代オープニング興収ランキングで20位に入り、ワーナー・ブラザース配給作品では『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』(11)と『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』(16)に数百万ドル差で迫る歴代3位の成績。しかもガーウィグ監督の前2作『レディ・バード』(17)と『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(19)の北米累計興収の合計を、たった3日で超えてしまったことになる。
さらに驚異的なのは、平日に入ってからも絶好調が続いていることで、公開4日目の月曜日の興収は2610万ドルで歴代13位。祝日やホリデーシーズンの月曜日を省けば、『エンドゲーム』に次ぐ歴代2位となる。同様に火曜、水曜、木曜と2000万ドル以上の興収を維持し、公開7日間で累計興収2億5840万ドルを突破。これは事前の想定を大きく上回るメガヒットだろう。
一方で2位に敗れた『Oppenheimer』だが、3610館で公開され(しかも3時間の長尺で)、週末3日間の興収は8245万ドル。『バービー』にダブルスコア近い差を付けられたとはいえ、ノーラン監督作品としては『ダークナイト ライジング』(12)と『ダークナイト』(08)に次ぐ第3位のオープニング成績。また、初登場1位を逃した作品としては『インサイド・ヘッド』(15)の9044万ドルに次ぐ歴代2位のオープニング興収となる。
そして気になるのは両者の作品評価。批評集積サイト「ロッテン・トマト」によれば、『バービー』の批評家からの好意的評価の割合は89%、観客からの好意的評価の割合は86%。『Oppenheimer』の批評家からの好意的評価の割合は94%、観客からの好意的評価の割合は92%。こちらでは『Oppenheimer』に軍配があがった。特にノーラン監督のこれまでの作品のなかでは『ダークナイト』と並ぶ高評価を獲得している点も見逃せない。
ちなみにガーウィグ監督とノーラン監督は、それぞれ監督作のうち2作がアカデミー賞で作品賞候補に挙がり、監督賞候補はどちらも1回ずつ、そして脚本部門で2回ノミネートされているという奇妙な合致がある。現在アメリカで起きている俳優組合や脚本家組合のストライキの影響で、秋以降に公開を予定していたアカデミー賞の有力作に続々と公開延期の可能性が浮上。そうなると『バービー』と『Oppenheimer』がアカデミー賞の舞台で再戦を果たすことも充分に考えられる。サマーシーズンを盛り上げる“Barbenheimer”は、まだまだ続きそうだ。
文/久保田 和馬