三谷幸喜『セクシー田中さん』芦原さん訃報に沈痛 脚色の難しさ・原作者の思い・自身の苦悩も「全部投げ捨てたいと思う」【コメントほぼ全文】

 脚本家の三谷幸喜氏が、3日放送のTBS系『情報7daysニュースキャスター』(毎週土曜 後10:00)に出演。日本テレビ系連続ドラマ『セクシー田中さん』の原作者・芦原妃名子さんの訃報を受け、時折言葉をつまらせながらコメントを寄せた。脚本家の立場から、原作があるものを脚色することの難しさ、原作者の思い、それを形にしていくプロデューサーの立場、そして自身がこれまで抱えてきた気持ちなど、4分30秒あまりの言葉では数々のことが伝えられた。

 ドラマ『セクシー田中さん』は、ドラマ終盤の脚本を芦原さん自身が執筆した。これに対する反響などを受け、1月26日、芦原さんは自身のXに「今回のドラマ化で、私が9話・10話の脚本を書かざるを得ないと判断するに至った」経緯を長文で投稿。文章は小学館と事実確認したとするもので、自身の原作への思いとともに、ドラマ制作前に「必ず漫画に忠実に」などの条件を確認するも、「当初の条件は守られず」と説明。

 ラストには「最後となりましたが、素敵なドラマ作品にして頂いた、素晴らしいキャストの皆さんや、ドラマの制作スタッフの皆様と、『セクシー田中さん』の漫画とドラマを愛してくださった読者と視聴者の皆様に深く感謝いたします」と結んでいた。

 28日には同投稿を削除し、「攻撃したかったわけじゃなくて。ごめんなさい」と記した。同内容を掲載していたブログにもアクセスできなくなった。29日に死去が報じられた。

 日本テレビは「芦原妃名子さんの訃報に接し、哀悼の意を表するとともに、謹んでお悔やみ申し上げます。日本テレビとして、大変重く受け止めております。ドラマ『セクシー田中さん』は、日本テレビの責任において制作および放送を行ったもので、関係者個人へのSNS等での誹謗中傷などはやめていただくよう、切にお願い申し上げます」とコメントしている。

■コメントほぼ全文
僕は、オリジナルの脚本を書くことの方が多いので、脚色って、あまりやっていないんですよね。他局ですけども、アガサ・クリスティの小説を、今まで3本、スペシャルドラマ化するっていうのをやってて。その時は、僕はもうとにかくクリスティの原作通りにやろう、なるべく忠実にやろうって心がけて、割とうまくいったんですよ。なんでうまくいったかっていうと、クリスティの小説って3時間のスペシャルドラマにちょうどいい文量なんですよね。

これを例えば、連続ドラマにしてください、ワンクール・11回やってくださいって言われたら、また全然、脚色のやり方が変わってくるから、もっと膨らまさなきゃいけなくなってくる。逆に、1時間のドラマにしてくださいって言われたら、今度削らなきゃいけない。それって、難しい問題で、もともと小説であろうが、漫画もそうですけども、それを映像化する時ってどうしても時間っていうものがそこに出てきて。映像は時間芸術なんですよね。上映時間・上演時間が決められてるんですよ。小説も漫画もそうじゃないから、自分の好きな時間をかけて読むことができるから、それをある一定の時間に収めなきゃいけないってなって、絶対そこに無理が出てくる。そもそも無理が出るものなんですよ。

だから、原作者の方は、映像化することを許可するときには、そこをやっぱり理解しておかなきゃいけない。まず難しい。特に漫画って絶対難しいと思って。あれって、もうカット割れもしてあるし、小説よりも具体的に描いてあるから、それを本当の映像化する時に、絶対みんなが満足するものなんてできるわけがないじゃないですか。でも、それをわかって映像化の権利を渡す時は、踏まえなきゃいけないし。それが嫌だったら多分映像化はさせないぐらいの気持ちでいてほしいなというふうに思うんですよ。

その上で、脚本家はできる限りやっぱり原作者の思いを汲んで、やっぱり世界観はその原作者が考えたものだから、それを逸脱してはいけないと思うんですよね。だから脚色って本当に難しくて、僕はできない、得意ではない方なんだけど。アカデミー賞だって、脚本賞と脚色賞が分かれてるんですよ。それぐらい違うものなんですよね、オリジナル脚本と脚色っていうのは。だから、その脚色っていうのはとても難しい。それをやろうとしてる人たちがいる。でも、その人たちの思いも当然あって、原作者の思いもあって、それをうまく擦り合わせていくのが、やっぱりプロデューサーの仕事だと思うので、原作者、プロデューサー、脚本家がきちんと心を一つにして作っていかないと、きっといろんな問題が起こるんだなというふうに思います。

もう1個いいですか?僕の話になりますけど、僕も今まで長い間仕事してきて、もうこんな仕事やめちゃってやめようとか、なんでこんな思いをしなきゃいけないんだ、なんてみんなわかってくれないんだ、なんで僕の作ったものを勝手イジってしまうんだと思ったことも何度もあるし。もう、本当に全部投げ捨てたいと思うし、死にたいと思ったことって実はあるんですよね。のほほんと書いてるように見えるかもしれないですけれども。

でも、その時僕はやっぱり踏みとどまったんですよ。なんで、踏みとどまったかっていうと、やっぱり僕は書いたものに対して責任があるし、もしかしたらこれから書くものに対しても責任があるし、今書いているものにも責任があるし。たぶん、この先自分が作ったものを楽しんでもらう人たちがいるとするならば、やっぱりその人たちに変な感情で読んでもらいたくないし、見てもらいたくないっていうのはあるから、やっぱり僕は、ここは踏みとどまらなきゃいけないなっていう風に思うんですよね…。踏みとどまってほしかったですね。

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