第80回ベネチア国際映画祭で監督作「悪は存在しない(英題 Evil Does Not Exist)」(来年ゴールデンウィーク公開)が銀獅子賞(審査員大賞)を受賞した濱口竜介氏(44)が12日、東京・日本外国特派員協会で凱旋会見を行った。
世界三大映画祭(カンヌ、ベネチア、ベルリン)のコンペ部門と米アカデミー賞での賞獲得は、日本では黒澤明監督以来。黒澤監督が30年間要したのに対し、濱口氏は3年で到達した格好だ。比較されることについて「とても偉大な人だけに何だか申し訳ない気がする。比べものにならない、とまでは言わないが、(受賞内容も)黒澤監督は2つが最高賞。スケールの大きさが違う」という受け止め方だ。
また達成速度に関しては「黒澤監督がそれだけ長い間、質の高い仕事を続けてこられた、ということ」とし、「自分はこれからどうなるのか震えている状態。できるだけ長く(映画の仕事を)続けたい」と冷静に答えていた。これからの活動は「準備はしている」と言い、将来的に海外との“合作”に関しても「興味はあります」と話していた。
◇濱口 竜介(はまぐち・りゅうすけ)1987年12月16日、川崎市生まれ。44歳。東大卒後、東京芸術大大学院映像研究科(修士課程)で映画づくりを本格的に始め、修了制作「PASSION」(08年)が国内外の映画祭で評価。「偶然と想像」(21年)でベルリン国際映画祭の銀熊賞(審査員グランプリ)、「ドライブ・マイ・カー」(21年)でカンヌ国際映画祭の脚本賞、米国アカデミー賞の国際長編映画賞を受賞した。
◆「悪は存在しない」あらすじ 自然が豊かな高原に位置する長野県水挽町は東京からも近いため、近年も移住者は増加傾向でごく緩やかに発展している。代々そこで暮らす巧(大美賀均)とその娘・花(西川玲)の生活は自然のサイクルに合わせ、慎ましい。ある日、巧の家の近くでグランピング場を作る計画が持ち上がる。コロナ禍のあおりで経営難に陥った芸能事務所が政府からの補助金を得て、その設営を計画した。しかし、彼らが町の水源に汚水を排水しようとしていることがわかり、町内は動揺し、その余波は巧の生活にも及んでいく。