昨春の「第16回アルトゥール・ルービンシュタイン国際ピアノマスターコンクール」で日本人史上最高位の2位に選ばれたピアニスト、桑原志織さん(26)のリサイタルが3月30日、東京都千代田区の紀尾井ホールで開かれる。コンクールのすぐ後、開催地のイスラエルでは同国軍とパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配する組織との軍事衝突が発生。「ウクライナでは戦禍の下で人々が苦しんでいる。平和への祈りを込めて演奏したい」と桑原さんは話す。
東京で生まれ育った桑原さんは東京芸術大を卒業し、留学先のベルリンで、3年に1度開催される同コンクールに応募した。新型コロナウイルス禍で本選は1年延期され、昨年5月に実施。桑原さんはラフマニノフの協奏曲を「思う存分、弾くことができた」という。優勝はスペインのフアン・ペレス・フロリスタンさんだった。
入賞者はイスラエルの各地を巡って記念演奏をするが、軍事衝突はその期間中に起きた。自身も集合住宅の地下の防空壕(ごう)に避難するなどし、飛行機を乗り継いでベルリンに戻った。「命が脅かされる非日常を体験したことは、自分の音楽人生に大きな影響を与える」と感じた。
現在もベルリン芸術大大学院(国家演奏家資格課程)で学び、今回の演奏会はコンクールで入賞後、初となる日本でのリサイタル。ベートーベンのピアノソナタ「悲愴(ひそう)」やシューベルトの「さすらい人幻想曲」などを披露する。
午後7時開演。一般4000円。問い合わせはカジモト・イープラス(050・3185・6728)。【明珍美紀】