ハリウッド5大スタジオの注目タイトルは?活況を取り戻した映画館の今後を担う、シネマコン情報総まとめ

昨年に引き続き、今年も米ラスベガスでCinemaCon(シネマコン)が開催された。シネマコンは、全米の劇場経営者を束ねる全米劇場所有者協会(NATO=National Association of Theater Owners)が主催する映画の見本市で、各スタジオが今後1年間に公開される新作ラインナップを紹介するプレゼンテーションを行っている。4月24日の初日にはソニー・ピクチャーズ、25日はワーナー・ブラザ―ス、26日がウォルト・ディズニー・スタジオとユニバーサル・ピクチャーズ、最終日の27日にはパラマウント・ピクチャーズとライオンズゲートのプレゼンテーションが行われた。

■ウィル・スミス復帰作に『バービー』『デューン2』など話題作ばかり!

ソニー・ピクチャーズは、「バッドボーイズ」第4弾の撮影現場から、ウィル・スミスとマーティン・ローレンスのコメント映像でプレゼンテーションをスタート。2021年の第94回アカデミー賞での事件から約1年、ウィル・スミスの復帰作として2024年以降の公開を予定している。ソニーは約2時間のプレゼンテーションで10本の新作映画を発表。2020年1月にアメリカを揺るがした「ゲームストップ株騒動」を映画化したグレイグ・ギレスピー監督、ポール・ダノ、セス・ローゲン出演作『Dumb Money』、「DUNE」や「GODZILLA ゴジラ」シリーズの製作会社レジェンダリー・ピクチャーズと組んだ『The Machine』、ジェニファー・ローレンス主演のR指定ラブコメ『No Hard Feelings』、デンゼル・ワシントンの人気シリーズ『イコライザー3』などの新映像披露とトークが行われた。

そのなかでも期待が高まるのが、PlayStationゲームを原作にした『グランツーリスモ』(9月公開)。このゲームのシュミレータープログラム「GTアカデミー」出身のレーサー、ヤン・マーデンボローの実話が元になっている。デヴィッド・ハーバーとオーランド・ブルームはGTアカデミーのコーチやマーケティング担当を演じ、『第9地区』(08)のニール・ブロムカンプ監督が演出を手掛ける。シネマコンの見本市エリアにはグランツーリスものアーケードゲーム機が設置され、連日多くの人がプレイしていた。日本公開も9月に決定している。
いよいよ6月16日に公開になる「スパイダーマン」アニメシリーズ第二弾『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』からは、約14分間の新着フッテージを上映。マイルズ・モラレス役のシャメイク・ムーア、グウェン・ステイシー役のヘイリー・スタインフェルド、今作より登場するジェシカ・ドリュー役のイッサ・レイが登壇し、マイルズ、グウェン、そしてジェシカのそれぞれに新しい冒険と挑戦が課されていることを明かした。

さらに、「ソニー・スパイダーマン・ユニバース」の第4弾となる『Kraven the Hunter』からアーロン・テイラー・ジョンソンが来場し、全米10月6日公開の新予告編を上映。アリアナ・デヴォースとラッセル・クロウが共演、ソニーにおけるマーベル・ユニバースの新基軸となるようなダークな映像が公開された。

翌25日に行われたワーナー・ブラザースのプレゼンテーションでは、『バービー』(8月11日公開)、『Wonka』『デューン 砂の惑星 PART2』(2024年公開)、『Aquaman and the Lost Kingdom』などの新作映像を公開。『バービー』からは、グレタ・ガーウィグ監督、バービー役のマーゴット・ロビー、ケン役のライアン・ゴズリングが登壇し、新しい予告編をお披露目。プロデューサーも務めるロビーは、「信じられないことに、誰もが知っているキャラクターのバービーは、これまで大きなスクリーンに登場したことがなかったんです」と言い、グレタ・ガーウィグに監督・脚本の白羽の矢を立てたのもプロデューサーのロビーの慧眼だったと認めた。

ガーウィグ監督は、「この映画の脚本を書いて演出する経験はとても楽しいものでした。映画をご覧になるみなさんにも同じような喜びを感じていただけるとうれしいです」と挨拶した。また、ガーウィグは脚本の段階からケン役にゴズリングを当て書きしていたところ、ロビーに「ライアンの知り合いなの?私は会ったことがないんだけど」と言われたと暴露。ゴズリングは「僕はケンを外側からしか知らなかったので…自分にケナジー(Ken-ergy)が宿っているかどうか、自信がなかったんです。でも、マーゴとグレタが、僕の人生からケンっぽさを引き出してくれました。ある日、髪を脱色し、足の毛を剃り、オーダーメイドのネオンカラーの服を着て、ベニスビーチをローラーブレードしている自分がいました」と、キャスティング後はすっかりバービーの世界の住人になったことを認めた。

続いて、ロアルド・ダールの『チョコレート工場の秘密』のウィリー・ウォンカの若き日を描く『Wonka』から、主演のティモシー・シャラメが登場。「皆さんの多くも同じだと思いますが、ウィリー・ウォンカの映画から、非常に大きな感動を得ていました。なので、夢が叶ったと言えると思います。ウィリーは喜びと楽観と希望に満ち、史上最高のショコラティエになりたいという願望を持っています」と語り、共演者たちにも惜しみない賛辞を贈った。「アメリカ人俳優として、ローワン・アトキンソン、オリヴィア・コールマン、キーガン・マイケル=キーといった偉大なる英国俳優との共演は夢のようでした。そして『パディントン2』をご覧になった方はピンとくると思いますが、ヒュー・グラントはまさに“人間爆弾”で、最高のコラボレーターでした」と、予告編が上映された際に会場が大いに沸いた“ウンパルンパ”役のヒュー・グラントについて言及した。『Wonka』は北米12月15日公開予定。

同じくティモシー・シャラメが出演する『デューン 砂の惑星PART2』からは、シャラメ、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督とゼンディヤがステージに登場した。「『パート1』は前菜のようなもの、『パート2』からメインコースです」とヴィルヌーヴ監督が言うように、ポール・アトレイデス(ティモシー・シャラメ)とチャニ(ゼンデイヤ)のロマンスが全面的に描かれるという。

予告編でも、神秘的な砂丘にたたずむ2人の姿が公開された。また、『パート1』のそうそうたる出演者に加え、イルラン王女役のフローレンス・ピュー、オースティン・バトラーが演じるフェイド=ロータ・ハーコネン、皇帝役のクリストファー・ウォーケンなどが『DUNE』の世界に参入する。ヴィルヌーヴ監督は、25万スクエアフィートのセットを作り、およそ40%をIMAXカメラで撮影したと言い、「ぜひ大きなスクリーンで観てほしいです」とプレゼンテーションをまとめた。

■ディズニー100周年記念作、『M:I』『ワイスピ』『インディ・ジョーンズ』も

シネマコン3日目、3社目のプレゼンテーションはウォルト・ディズニー・スタジオ。ディズニー・エンターテインメント劇場配給担当上級副社長のトニー・チェンバースは、2023年はスタジオが100周年を迎える節目の年で、世界各国にある系列7つのスタジオのそれぞれの新作映画を公開すると発表。7つのスタジオとは、ディズニー、ピクサー、ウォルト・ディズニー・アニメーション、20世紀スタジオ、ルーカスフィルム、マーベルスタジオ、サーチライト。そのなかから、今後公開される期待作の予告編を多数上映した。まずは、11月10日北米公開予定の『The Marvels』と、11月22日公開予定の『ウィッシュ』。どちらも秋の映画シーズンの期待を背負う大作映画だ。

また、5月28日に北米公開の『リトル・マーメイド』からは、ヴィランのアースラを演じるメリッサ・マッカーシーが歌う楽曲が公開になった。そして、間も無く開幕するカンヌ国際映画際でワールドプレミアが行われる『マイ・エレメント』の冒頭20分間の映像を公開。舞台は土・火・水・風が互いを大切にしながら暮らしているファンタジックな世界、エレメント・シティ。火の街で暮らしている火のエレメントのエンバーと、流れに身を任せる水のエレメント、ウェイドが、他者とのつながりのときめきを見つけ、世界の中で自分の居場所を見つける物語だ。

サーチライト・ピクチャーズからは、タイカ・ワイティティ監督の最新作『Next Goal Wins』の新予告編が公開。低迷するサッカーチームの再起を計るコーチを、マイケル・ファスベンダーが演じる。北米公開は11月17日を予定。

『マイ・エレメント』同様に5月のカンヌ国際映画祭でプレミアが行われる『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』からは、インディ博士を演じるハリソン・フォードがビデオメッセージで登場。続いて流された特別映像では、マッツ・ミケルセンやフィービー・ウォーラー=ブリッジと共に全力疾走するハリソン・フォードの姿が公開された。6月30日(金)公開予定。

4社目のユニバーサル・ピクチャーズのプレゼンテーションのうち、クリストファー・ノーラン監督の『Oppenheimer』、『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』のステージでヴィン・ディーゼルらキャスト陣が沸かせたステージについては既報の通り。現在世界中で大ヒット中の『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を手掛けたイルミネーションの最新アニメーション『Migration』の新着映像が公開された。今度の作品は、アヒルの一家の冒険物語。声の出演には、クメイル・ナンジアーニ、エリザベス・バンクス、オークワフィーナ、ダニー・デヴィートらが名を連ねる。北米12月22日公開予定。そのほか、ジャック・ブラックが登壇し『カンフーパンダ』最新作をプレゼンし、ジョン・M・チュウによる名作ブロードウェイミュージカルの映画化『Wicked』の最新映像を上映。エルファバ・スロップ役のシンシア・エリヴォ、グリンダ・アップランド役のアリアナ・グランデ、フィエロ・ティゲラー役のジョナサン・ベイリー、オズの魔法使い役のジェフ・ゴールドブラム、マダム・モリブル役のミシェル・ヨー、プファニー役のボーエン・ヤンなど、キャスト名を聞いただけでも期待が募る。北米公開は少し先で、2024年11月27日を予定している。

シネマコン最終日のプレゼンテーション、パラマウント・ピクチャーズは『ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ』のダンスパフォーマンスから開始。なんとスタジオの重役もタートルズの扮装で登場するというサービスぶりで、続いて登壇したセス・ローゲンにいじり倒されていた。5歳のころからタートルズのファンで、8歳の誕生日に父親にヌンチャクを買ってもらったというローゲンが声の出演を果たした『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』は、8月25日(金)日本公開。

『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』の前日譚となる『A Quiet Place: Day One』の制作も発表された。オリジナル版のジョン・クラシンスキー監督は今作ではなく、『IF』(2024年5月24日北米公開予定)の監督を務める。パラマウント・ピクチャーズの目玉作品は、7月21日に公開される『ミッション:インポッシブル』シリーズ最新作、『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』。約20分の未公開フッテージが上映されると、会場は大きな歓声に包まれた。

最後のプレゼンテーションとなったライオンズゲートは『The Hunger Games: The Ballad of Songs and Snakes』『Saw X』といった過去のヒット作の続編の特報に加え、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のジョイ役ステファニー・スーと、Netflixオリジナルシリーズ『エミリー、パリへ行く』のミンディ役アシュレー・パークらオール・アジアキャスト&スタッフのR指定コメディ『JOY RIDE』の特別試写を実施。3月のサウスバイ・サウスウエストで上映され大人気を博した作品で、アジア系米国人の彼女たちがパワー全開でコメディに挑む。今作の日本公開は未定だが、7月7日に北米で公開になると、大きな話題になることだろう。

今年のシネマコンでは、ハリウッド5大スタジオのプレゼンテーションが行われ、パンデミック後ようやく盛況を取り戻した映画館の復活を祝うようなコンベンションだった。だが、これらの新作映画は撮影終了もしくはすでに開始されている作品で、現在ハリウッドで行われている脚本家ストライキ以前に執筆が完了しているもの。今年は各スタジオお祭りモードでプレゼンテーションを行っていたが、脚本家協会と映画製作者協会(AMPTP)間の交渉が成立しない限り、来年、再来年の見通しに関しては未知となる。また、発表された作品に人気作・ヒット作の続編が多いことも気がかりだ。ハリウッドと映画興行が本当に健全さを取り戻すのは、まだ時間がかかるかもしれない。

文/平井伊都子

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