チャン・イーモウ監督、高倉健さんの伝説的エピソード語る 撮影で「現場の椅子を撤去」と指示

チャン・イーモウ監督、高倉健さんの伝説的エピソード語る 撮影で「現場の椅子を撤去」と指示

東京国際映画祭でマスタークラスを開催したチャン・イーモウ監督(撮影・村上幸将)

(日刊スポーツ)

東京国際映画祭で特別功労賞を受賞した、中国のチャン・イーモウ監督(73)が25日、都内でマスタークラスを開催した。

席上で、2005年(平17)の監督作「単騎、千里を走る。」に主演し、親交も深かった高倉健さん(14年に死去)が、撮影中に全く座らないため、撮影現場から椅子を全て撤去したことなど、高倉さんの伝説的なエピソードを明かした。

チャン・イーモウ監督は「高倉健さんと一緒に映画を作った時、印象的だったのは、寡黙な人で隣にいてもほとんど話はしない。撮影を終え、家に帰ると自己嫌悪に陥った」と振り返った。そもそも、同監督自身「監督になる前は寡黙であまり話すのは好きじゃなかった」という。「中国で監督をやるには、各方面と話をするので、言わなくて良いことも言わないといけない。役者に対しても、細かく指示しないといけない。話がくどいのはきらいなんですけど、自分もくどいくらい話すようになった」と語った。そのため、高倉さんと2人でいても「無駄に話すのは私だけ。健さんは無駄話、嫌いだからね。自己嫌悪に陥りました」と振り返った。

「単騎、千里を走る。」については「私が撮影した作品の中で、唯一、私がずっと立って撮った映画です」と、、87年の監督デビュー作「赤いコーリャン」から今年公開の「満江紅(マンジャンホン)」に至るまで唯一、ずっと立ち続けて撮った映画だと断言した。その上で「健さんと仕事をしていて、現場の彼は座らなかった。ずっと立ちっぱなし。当時、70歳を超えた方だったので、芝居がない時は休んでも良いと思うけれど、座らない。キャンピングカーにも、休憩の部屋にも行かない。遠く離れたところで、他の方の芝居を見ている」と、高倉さんの撮影現場での様子を振り返った。

現場で、通訳に「(高倉さんは)座らないんですか?」と聞いたという。その際「彼は、そういう人なんですよ。とにかく芝居がなくても、非常に真剣に、真面目に自分が出る映画が、どういうものなのかを一生懸命、尊敬するような形で他の人の仕事も見ている」と回答があったいう。それを受けて、撮影現場で「現場の椅子を撤去」と指示したという。「座ろうにも座れないように、高い机を置き…スタッフも全員、立ったまま撮影をしたわけです」と当時を振り返った。唯一、録音のスタッフが「監督、ごめん。機材があって、腰を低くしてやるのは無理。スツール、いいですか?」と言ってきたため「いいですよ。僕の目につかないように座ってください」と指示したという。

チャン・イーモウ監督は、中国で唯一の映画専門大学「北京電影学院」卒業後、撮影監督を務めていたが、87年の中国映画「古井戸」(呉天明監督)では撮影に加え、主演を務めた。そして、同年の第2回東京国際映画祭で作品はグランプリ、自身は主演男優賞を受賞した。

受賞当時は、中国北西部のゴビ砂漠「赤いコーリャン」の撮影をしており、東京国際映画祭には参加できなかった。「もちろん、携帯電話はなく、ラインプロデューサーが真夜中に砂漠を走ってきて『東京国際映画祭舞台で最優秀主演男優賞、おめでとうございます』と。本当に驚きました」と口にして、懐かしそうに目を細めた。そして「現場で出演していた男性俳優たちから『監督が主演男優賞を取ったのだから、僕らはやらなくて良いですよね』と言われた。人生初の主演男優賞ですし、人生最後の主演男優賞だと思います」と笑った。

マスタークラス終了後は、中国メディアや日本のファンからサイン攻めに遭い、会場から退場するのも困難な状況に陥った。アジアを代表する世界的巨匠・チャン・イーモウ監督の人気は健在だった。

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