日本の高度成長期時代、日本人のタンパク源のトップだったクジラ。牛や豚、鳥よりもクジラが多く食されていた。クジラは今では輸入に依存しているが、「輸出」までしていた。全盛期の日本での消費量と比べて現在では1%までに衰退したクジラ産業。そんなクジラを“食”と“科学”の側面から語り尽くすドキュメンタリー『鯨のレストラン』が9月2日より、東京・新宿K’s cinemaで公開されることが決定した。
監督を務めたのは、世界中のメディアが報じた『ビハインド・ザ・コーヴ〜捕鯨問題の謎に迫る〜』の八木景子。もともとクジラとは何の所以もなかった。ましてや、映画製作の経験すら全くなかった2011年、東日本大震災時に奇しくも石巻市でボランティアに参加していた。後に、和歌山県・太地町を舞台に処女作である映画『ビハインド・ザ・コーヴ』の撮影をしていた14年に石巻市が「日本最大の捕鯨基地」と知り、驚愕したという。多くの偶然が起き、人生の転換期にひょんなことから、クジラの問題に関わることとなった。
八木監督が「今、伝えなくてはいけない」という使命感を持って、8年越しで完成させた本作は、自然資源のルールを決める国際会議と無縁のクジラ専門店の大将と、国際会議の主要人物の証言を記録したもの。
予告編に登場するのは、国内では手で数えるほど数件になってしまったクジラ専門店「一乃谷」を営む大将、谷光男さん。全国のクジラ店からも一目おかれ尊敬されている彼が、東北から上京して東京・神田に「一乃谷」として、お店を構えたのは、宮城県・石巻市で東日本大震災が起こる1年前の2010年のことであった。
映画では、クジラの料理としての魅力だけではなく、環境問題にも触れ、科学的な見地から現代におけるヴィーガンブームからの森林伐採を含め「タンパク源」のバランスの問題にも向き合う。