キャンベル氏 五輪開会式の演出意図を解説「歴史の悲しい部分に目を向け、獲得したものを見る」

 日本文学研究者で早大特命教授のロバート・キャンベル氏(66)が30日、TOKYO MX「バラいろダンディ」(月〜金曜後9・00)に生出演し、物議を醸しているパリ五輪開会式の演出について私見を語った。

 派手な女装の「ドラァグクイーン」らが橋の上で横並びになった演出が、レオナルド・ダビンチの名画「最後の晩餐(ばんさん)」を連想させるとして、極右政治家やカトリック関係者から非難の声が上がっている。式の芸術監督は、オリュンポスの神々と関連づけた異教徒の祭りをイメージしたとし、「最後の晩餐」から着想を得たとの見解を否定した。

 開会式をリアルタイムで見ていたというキャンベル氏は、「飽きさせない、素晴らしいエンターテインメントと、やっぱり平和の祭典。スタジアムから飛び出して、街のインフラそのものと、平和の祭典に結び付ける斬新な発想だと思う」と、式の演出を絶賛。「船で選手たちが行進しますよね。その間に生パフォーマンスと動画を混ぜて、12くらいのテーマで作っていた」とした。

 キャンベル氏は式典のテーマとして、2つあると分析した。まず一つは「闘争を通してしか得られない自由、つまり戦って獲得できる人間の基本的な価値」。フランスは市民が蜂起した18世紀のフランス革命で、多くの血を流しながら自由を勝ち取った。

 式では、王妃マリー・アントワネットが処刑直前まで幽閉されていた建物の窓から、生首を持った赤いドレスの女性が多数、顔を出してオペラを歌い、最後は鮮血を思わせる赤テープと煙がセーヌ川に向けて放たれた。キャンベル氏は「言ってみれば、すごくグロテスクな、歴史の悲しい部分に目を向けて、獲得したものを見る」と解説した。

 もう一つは、「自由、平等、博愛」というフランスの理念に関係しているという。「極右の勢力が移民に対して反対を旗印にして、台頭している」と、フランスの政情を解説。開会式では「黒人のマリ系フランス人のアヤ・ナカムラさん、フランスで一番はやっている歌手に、式典で絶対歌わせてはいけないと、極右の人たちがすごく論点にしていた」という。

 しかし、ふたを開けてみれば、ナカムラはフランス学習院前で堂々たるパフォーマンスを見せた。「フランス文化を守る殿堂から登場させて、しかも歌がアラビア語、フランス人の若い子たちが使っているラップ調が盛り込まれて、後半になると共和国親衛隊の楽団が一緒に歌ったりする」とキャンベル氏。この演出について、「フランスという国が、今リアルにアヤ・ナカムラのような人だよということを前面に、他者性を打ち出していくということは革命的」とし、「オリンピックの中で、ここまで恐れずに反対が出ると分かっていて、他者性、多様性、包摂的な社会を歌っている」と分析した。

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